カロリー制限と異なり、七面倒くさいカロリー計算は無用。糖分の多い食べ物を知り、それを避けるだけでOK。この手軽さが、糖質制限食(糖質制限ダイエット)の魅力。
それ以上にうれしいのが、ひもじい思いをしなくていい点だ。カロリー制限のような腹6分目とか8分目は必要ない。肉も油も好きなだけ食べていい。だから、続けやすく、失敗しにくい。
アルコールOKというのも、わたしのようなのんべえにはヒジョーにありがたい。手を合わせたくなったくらいだ。なにせ、以前にカロリー制限をしていたころは酒を一滴も飲めず、喉と心の渇きがものすごかった。大げさではなく、カロリー制限によるストレスで病気になりそうだった。
糖質制限食のやり方をさっそくご紹介しよう。
ひとくちに糖質制限食といっても、調べてみるといろいろな方法があることがわかる。わたしはそれらをじっくり比較し、一番効果が見込めそうなかたちに組み立てなおした。要するに、いいとこどりだ。
わたしは病気の治療目的だったので、わりと厳しめのルールになっている。そのぶん、汎用性がある。これをベースに、一人ひとりに合うよう、カスタマイズしてほしい。
「そろそろ水着の季節だから、ダイエットしようかしら」なんて人が、わたしと同じルール(1日の糖質摂取量20g以下を守っている)でやる必要はない。1日糖質摂取量を70~140gに抑えるだけでも十分にダイエット効果が見込めるだろう。糖質制限には、糖質摂取量に準じて「ソフト」「ハード」「スーパーハード」の3つがある。が、そのあたりは後述するとして、まずは実践方法から。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)ガイドライン
わたしがまず頭に叩きこんだのは、このポリシーだ。
1.肉、卵、魚介、大豆食品――たんぱく質は好き放題、食べる
肉や卵、魚介、大豆食品は食べたいときに食べたいだけ食べる。たんぱく質の大量摂取による健康被害の報告はないのである。
とくに、卵は完全栄養食品。良質のたんぱく質にくわえて、ビタミンとミネラルをバランスよく含む。わたしは毎日2~3個食べている。
大事なのは、糖質は食べてはいけない、という後ろ向きの気分でなく、たんぱく質や脂肪をたくさん食べよう、という前向きな気分を維持することだ。
ソーセージやハム、ベーコン、サラミ、レトルトハンバーグやミートボールなどの食肉加工食品は、食品添加物とAGEを大量に含むので、ほとんど口にしない。
2.適量の野菜を食べる
チンパンジーから分岐してからこっち(それ以前からだと思うが)、人類はずっと植物(野菜や野草、木の実、種子)を食してきた。いうまでもなく、植物に含まれているビタミンやフラボノイド、消化酵素、食物繊維などの栄養素目当てだ。われわれ現代人も積極的に食べるべきだろう。
野菜を食べるのは肉や魚のあとだ。野菜のなかには糖質の多いものもあり、たんぱく質を先に食べることで糖分の吸収がゆるやかになるからだ。
3.少量のナッツや種子類を食べる
ナッツは最高だ。オレイン酸やαリノレン酸などの良質の油をたくさん含んでいるものが多く、食物繊維とたんぱく質も豊富。ビタミンとミネラルの補給に役立つ。動脈硬化の予防効果が高く、生ナッツを毎日食べると寿命が数年伸びるといわれている。
家族が隣でクッキーやお菓子を食べはじめたりすると、炭水化物への執着心が再燃することもあるが、ナッツがそれを完璧に抑えてくれる。腹もふくれる。しかも腹持ちがいい。
わたしが食べるのは、アーモンドかくるみ、マカダミアナッツあるいはヘーゼルナッツ。いずれもGI値が10以下と低く、糖質も100g中10g以下。といっても、食べすぎは禁物。ひとつかみ程度にしている。同じナッツでも、カシューナッツなどは糖質含有量が高いので食べない。
基本はナマ。妥協してもノンフライの無添加。加工ナッツは添加物や悪い植物油脂たっぷり。毒だ。生のナッツを置いている店は少ないが、いまは容易に手に入る。ネット通信時代に感謝だ。
4.乳製品はチーズだけを食べる
糖質制限食を始めて知った、チーズの世界の奥深さに舌を巻いた。しつこいようだが、脂質はいくら摂っても問題はない。チェダーやカマンベール、マスカルポーネといったポピュラーなチーズから、ブルーチーズやウォッシュチーズなどの珍味まで、いろいろと堪能している。
おやつにうってつけだし、主食にもなってくれる。チーズフォンデュは楽しい。
なお、牛乳やバター、ヨーグルトはチーズとくらべると糖分が多いので、避けている。乳製品のたんぱく質はインスリン分泌量を確実に増やすことがわかっているが、チーズだけは発酵過程でこのたんぱく質が減るとわかっている。
5.油をたっぷり使う
これまでの常識では、健康のためには料理の油を控えめに、というのが正解。いまだにそれを信じている人も多い。これが中身のない迷信ということは、賢明なる読者兄ならもうおわかりだろう。
油をしっかり摂れば寿命が延びることがわかっている。世界137か国の男性の、1日1人あたりの摂取摂取量と平均寿命の関わりを追いかけた海外の調査で、脂肪摂取が1日125g以内の場合、摂取量が増えるほど長生きしていることがわかった。逆に、1日40gを下回ると、死亡率と脳卒中死亡率が確実にアップする。
わたしは野菜炒めにはラードを大さじ2~3杯使い、サラダにはオリーブ油かココナッツ油をどっさりとかけている。血液サラサラ効果が高いDHAとEPA(魚油)も積極的に摂る。魚油は、青魚に多く含まれているから、刺身から摂れる。
6.調味料は塩こしょうが基本
肉や魚の味つけは塩とこしょうが基本。そう聞くと、味気ないと思われるかもしれないが、ハーブやスパイスを上手に使えば、この問題は解決だ。わさびやからし、マスタード、バジル、オレガノ、ナツメグ、クルクミン、七味、鷹の爪……味覚に広がりとアクセントを与えてくれるものは多い。いつもの黒胡椒を、ホールタイプに変えて、使うたびにミルでごりごり挽くだけでも、ウソみたいに料理がうまくなる。
醤油や味噌(米味噌や麦味噌)は、普通に使うぶんには問題ないが、小麦や米が原料なのでそれなりに糖分を含む。使いすぎたり、めんつゆを飲み干したりするのはまずい。ちなみに、グルテンフリー派のわたしは、原材料に小麦を使わないたまり醤油(大豆と塩のみ)を愛用している。普通の薄口醤油や濃い口醤油より糖質がずっと少ないからだ。
NG調味料は、みりん、調理酒、白味噌、ケチャップやソース類。砂糖たっぷりだ。マヨネーズは砂糖不使用のものを使えばOK(市販のマヨネーズは、質の悪い油が使われてるので、手づくりだと最高)。ドレッシングの使いすぎにも気をつけている。
7.水、コーヒー、日本茶、紅茶を楽しむ
砂糖やブドウ糖果糖液糖入りのソフトドリンクの存在は、頭から消去した。自販機は路傍の石である。飲むべきは、ミネラルウォーター、コーヒー、日本茶、紅茶だ。コーヒーや紅茶に、ミルク代わりの豆乳を落とすこともある。少し淡泊なカフェオレやミルクティーになる。問題なくうまい。
8.酒は好きなだけ飲む(醸造酒以外)
焼酎やウイスキー、スピリッツ類(ジン、ウォッカ、テキーラ、ラム)などの蒸留酒は糖質ゼロ。アルコールにもカロリーがあるが、これは「エンプティーカロリー」といい、血糖に影響を与えない。気兼ねなく飲める。
ただし、ビールや発泡酒(糖質ゼロを謳った商品ならOK)、日本酒、ワインなどの醸造酒はNGだ。糖質をたくさん含んでいる。ただし、辛口の赤ワインはOK。糖質がほとんどない。
9.減らすか、完全にやめたい食品
画像をクリックすれば、各グループの一覧表が開く。一覧表には、GI値、GL値、1食中および100g中の糖質含有量、カロリーなどをまとめた。
パン、パンケーキ、ベーグル、ラーメン、うどん、蕎麦、焼きそば、素麺、ナン
パスタ、ピザ、コーンフレーク、シリアル、グラノーラ、ミューズリー、オートミール、とうもろこし、キヌア
ジャガイモ、ポテトフライ、片栗粉、サツマイモ、長いも、自然薯、タピオカといった芋類はでんぷんが多い。少量の春雨や里芋はOKだ。こんにゃくは、糖質ゼロ食品なのでいくら食べてもOK。豆類は、大豆と大豆食品以外は避ける。落花生や無塩ピーナッツバターはOKだ。
ケーキ、クッキー、クラッカー、ビスケット、スナック菓子、シャーベット、アイスクリームなどはすべからく、過剰に砂糖を使用している。穀類や芋類を使うものも多い。
ソフトドリンクは砂糖や糖分がたっぷりだ。果汁100%だろうが、ストレートジュース(果物生絞り)だろうが同じだ。たとえ、ビタミンやフラボノイドといった健康成分を含んでいても、糖質がもたらす害のほうがはるかに大きい。なかでも、炭酸飲料は最悪。砂糖のほかにブドウ糖果糖液糖(コーンシロップ)や着色料などの添加物を含み、GI値は果物ジュースより20ポイントも高い。さらに、炭酸が体内のphバランスを酸性にする。夏場、のどの渇きに耐えきれず、急きょコンビニに飛びこんだときは、トマトジュースや野菜ジュース、豆乳を買う。
バナナやスイカ、マンゴー、パイナップルなど糖質の多い果物は避ける。ほかは少量なら食べる。なにがよくてなにがダメなのかは「果物一覧」でわかる。ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、さくらんぼ)は糖質少なめだ。レーズンやドライデーツ、プルーンといったドライフルーツはすべからくNG。ジャムは、低糖も砂糖不使用もNG。
食べるべきかどうか迷ったら、勘でなく、数字に頼っている。それぞれの食品が血糖に与える影響は、「GI値」や「GL値」を見れば一目瞭然なンだ。わたしは、GI値とGL値をもとに、各食品1食あたりの血糖影響度を算出。食品グループごとに一覧表にまとめている。一覧表はこのブログにもアップした。下の付箋をクリックすれば開く。活用いただきたい。
食品一覧表の見方商品を購入するときは、ひっくりかえして商品ラベルをかならずチェックしている。
確認すべきは、栄養成分表示の「糖質」だ。
「糖質」ではなく「炭水化物」と表記されることのほうが多い。というか、糖質は炭水化物に含まれている。
糖質=炭水化物-食物繊維
なお、食物繊維は消化も吸収もされないから、人体への生理学的影響はゼロだ。ほとんどの食品に含まれる食物繊維はさして多くないため、基本的に「炭水化物=糖質」と考えて問題はない。
糖質制限食の効果を最大限に享受しようというなら、食生活から糖質を完全排除する、というのが、なんといっても理想的。
しかし、そこまではちょっと……という人、とりあえずトライして様子を見てみたい人、昼食は社員食堂や仕出し弁当を利用せざるを得ないという人などは、3食のうちの1食か2食を糖質制限食に切り替えることから始めてみる、という手もある。
糖質カットあるいは糖質オフ(ローカーボ)の食べ物が手に入る通販ショップも最近は増えてきた。ぜひ活用してほしい。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)の種類
糖質制限の効果を100%享受するなら、糖質の完全排除が理想的。これが難しい場合、1日1食か2食を糖質制限食に切り替える手もある。
いろいろな糖質制限のやり方を紹介しよう。
ソフト糖質制限食(糖質制限ダイエット)
夕食だけを糖質制限食に置き換える方法。だれでも気軽に始められて続けやすい。とりあえず試してみたい人や、生活習慣病の予防や健康維持を目的におこなう人ならこれでもいいだろう。ダイエットのためにやる人もとりあえずここから始めるといい。
ただし、効果は薄い。
夕食でなく、朝食や昼食を糖質制限食にしたい人もいるかもしれない。NGだ。睡眠中は体も脳も活動しない。ブドウ糖が消費されにくく、内臓脂肪ができやすいからである。
ハード糖質制限食
朝食と夕食を糖質制限食にチェンジする。完全な糖質制限に興味はあるものの、会社勤めなのでなかなか難しい、という人などに向く。
ランチはいつもどおり、同僚たちと社員食堂や定食屋で食べて、自宅ではきちんと糖質制限食にはげむ、といった感じだろう。メタボ解消目的ならここからスタートするといい。
スーパーハード糖質制限食
スーパーハード、などというと敷居が高く感じるが、じつは一番スタンダードな方法。3食とも糖質制限食に置き換えることで、血糖値の上昇もインスリン追加分泌も抑えられ、体内の糖代謝が非常に安定する。
病気(糖尿病など)やメタボの改善をもくろむなら、ベストな選択肢だ。スーパーハード糖質制限食を開始すると、エネルギー代謝の軸足が糖代謝から脂質代謝へと移り、効果をはっきり実感できる。
管理人はスーパーハードを実践
糖尿病やインスリン抵抗性の改善を目的にしているなら、スーパーハード一択だろう。生活習慣病の解消効果を期待している場合も、スーパーハードをおすすめしたい。
こうしたケースでは、食後高血糖を防ぐのが一番の狙いなので、1食あたりの糖質摂取を20g以下に抑えるべきだといわれている。そうでない人は、少し基準をゆるめて、1食あたり40g以下くらいでもいいそうだ。
わたしは循環器系疾患の治療目的にスーパーハード糖質制限食を実践していた。朝食は20代のころから基本的に食べないので、昼と夜、糖質制限食を食していたわけだ。1日の糖質摂取は30g以下といったところだった。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)をしてはいけない人
腎臓や肝臓、すい臓にトラブルを抱えているなら、糖質制限はNGだ。糖尿病治療中の場合も医師に相談が必要だ。
腎臓
糖質制限食では、これまで糖質で摂っていたカロリーをたんぱく質でおぎなうことになる。腎臓の働きがよくないと、たんぱく質をうまく代謝できない恐れがある。血液検査のクレアチニン値が高いなど、腎臓にトラブルを抱えているなら、糖質制限はやめておいたほうが無難だ。もっとも、糖質制限食で腎臓が悪くなる、ということはない。
肝臓
糖質制限食を始めると、ブドウ糖が不足しがちになる。これをカバーするために、肝臓がアミノ酸からブドウ糖をつくりはじめるわけだが、肝臓が弱っていると、十分なブドウ糖を産生できない恐れがある。だから、肝臓病を患っている人も、糖質制限に向かないといわれている。
すい臓
活動性すい炎を患っていて、CRPや血中アミラーゼの数値が高いなら、高脂質の糖質制限には向かないといわれている。ただし、糖質制限食ですい臓を悪くする、ということはない。
どのケースであるにしろ、どうしてもやってみたいなら、医師に相談だ。
- 糖質制限は糖尿病治療が本来の目的である。
- 軽度~中度なら、通常は糖質制限食だけで血糖をコントロールできるようになるという。
- インスリン療法中の重症糖尿病でも、インスリンの量を1/3以下まで減らせるという。
- ただし、糖尿病を治療中の人は、前もって医師に相談する必要がある。
- 血糖降下薬やインスリン注射で低血糖症状を起こす心配があるからだ。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)の経過
糖質制限食をスタートしたらどうなるの? という質問をいただくことが多いので、開始後にたどる経過をお伝えしておきたい。
断っておくが、これはわたしのケースである。が、誰しも同じような経過をたどるらしい。
開始直後
スタートしてまず感じたのは、なんだか体が1日中ぽかぽかしているゾ、ということだった。肉や油をたっぷりと食べているからだろう。体内の熱量が、あきらかに増大しているのだ。
2~3日後
肌が若返っていくのを感じるようになった。カロリーや動物性たんぱく質の摂取制限をおこなうと、肌がかさつく。糖質制限はその反対。ハリとうるおいが生まれる。吹き出物が減る。たんぱく質や脂質の大切さを思い知る。糖質がにきびなどの原因だったのだと痛感する。
1週間後
そうこうするうちに体重が落ち、1週間で3~4キロも減った。あのころはやせていたから、ダイエットをするつもりなど毛頭なかったのだが。
ちなみに、スーパーハード糖質制限食では、最短で3日、遅くとも1週間くらいで体重が減りだすといわれている。ダイエットのための糖質制限なら、スーパーハードを2~4週間おこない、その後はハードかソフトで体重を維持するといいようだ。
3週間後
3週間目あたりから、ひどい倦怠感や、集中力の低下に見舞われた。低血糖の症状に近かったと思う。これがしばらくつづいたあと、生まれ変わった、『ザ・フライ』の蝿男のようにエネルギッシュになり、集中力は以前より増した。
数か月経過
絶好調である。
おもしろいのは、炭水化物をたまに口にすると、偏頭痛がしたり、頭がくらくらしたり、しばらくして気分が滅入ったりすることである。1度、試しにパンや白米、そば、カレーなどをどか食いしたら、その数時間後に痛風か神経痛のような激しい痛みに襲われ、身の危険を感じたことがあった。
長らく恒常性を保っていた血糖に突如、大きな上下動があったもンだから、肉体がビビッドに反応したのかもしれない。それにしても、ふだん食べつけていないからといえ、これほどのダメージを受ける食品を毎日食べていたらどうなるか、想像すると恐いものがある。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)のまとめ
最初に書いたように、糖質制限は非常に続けるのが楽な食事療法であり、ダイエット法である。なにしろ動物のプリミティブな欲望「食欲」と戦う必要がないのである。
糖質制限に失敗したというのなら、メンタルを鍛えることだ。が、そうはいっても甘いものに目がない気持ちもわかる。以下の記事では糖質制限を継続するコツをお話ししよう。
しっかりと糖質制限を実践しても痩せなかった、あるいは効果が出なかった、という場合の対処法も、上の記事にまとめている。