グルテンアレルギーがもっとも顕著に、苛烈にあらわれたものが「セリアック病」だ。
とても怖い病気だ。
パンをひとかけらでも口にすれば、小麦グルテンが腸粘膜をめためたに破壊する。腸は、体内の免疫細胞の6~7割が存在する、人体最大の免疫器官だ。このバリアー機能が破られると、本来なら体内に吸収されることのない物質が血中に入りこんで、血流に乗って全身に運ばれるのだ。
「本来なら体内に吸収されることのない物質」というのは、食品や水に含まれる化学物質、有害物質、便に含まれる毒素、アミノ酸レベルまで分解されていないたんぱく質などのこと。「体内に吸収されてはいけない物質」のことで、身体のさまざまな部位で炎症や免疫反応を引き起こす原因となるのである。
人体が受けるダメージはきわめて深刻だ。
患者の約半数は最初、下痢や腹痛、あるいは栄養失調(消化機能が衰えるため、栄養の吸収もまともにおこなえなくなる)による体重低下をうったえる。必要な栄養素が吸収できなくなるため、やがては成長遅延や栄養欠乏症、貧血、骨粗しょう症などを引き起こす。深刻なケースでは、糖尿病やほかの自己免疫疾患、腸のがんを発症することもあるという。
一方、残り半分の患者は、関節炎や神経障害、精神疾患、頭痛、不妊といったいろいろな症状に見舞われるという。
この記事は、グルテンと下痢の関係についてだけでなく、セリアック病の諸症状についても触れている。
- 腸粘膜(消化途中の食べ物や便と、体内組織を区切っているバリアー)が破られる。
- 腹痛や下痢を起こす。
- 消化吸収がうまくいかなくなる。
- 体重が減る。
- 栄養失調になる。
- 貧血になる。
- 成長遅延、骨粗しょう症、糖尿病、がんを発症する。
- 異物が、体内へ侵入する。
- 善玉菌のつくる物質(本来は免疫力を高める)まで血中に入り、炎症や免疫反応を起こす。
- 関節炎や神経痛、偏頭痛、うつ病、慢性疲労などを引き起こす。
急増するセリアック病
セリアック病の罹患者はこの半世紀で4倍に増えた。ロックフェラーの送りだした改良型小麦が世界中へ伝播していったのと、完全に時期を一にしている。米国などでは、セリアック病のまん延は、遺伝子操作によって小麦の性質が変化したからだとはっきり指摘する専門家もいる。
そのあたりは「グルテンフリーとは」の記事がくわしい。
改良型小麦の普及は、アトピー性皮膚炎や花粉症といったアレルギー疾患の増加とも並行している、これも興味深い事実だろう。この半世紀、アレルギー疾患は右肩あがりに増えつづけているが、そこには改良型小麦が深く関与しているかもしれないのだ。
セリアック病の発症率は現在、133人に1人。ただし、医師の理解不足や診断の難しさも手伝って、発症から診断がくだるまでに平均10年以上かかるという。このため、自覚のあるセリアック病患者は全体の10%に過ぎない。
治療はシンプルだ。グルテンを含む食品を、毎日の献立から一掃すればいい。