糖質制限には驚くべき効果がある

糖質制限で健康になってハッピー

糖質制限食をはじめるまえ、わたしは心筋症の疑い濃厚であった。レントゲンでみると、心臓が1.5倍くらいに膨らんでいた。心肥大だ。脈が高く、心電図が異常を示し、検査結果を裏づけるように、毎食後、その場から動けなくなるような強い不整脈に襲われていた。

ほかにも頭痛など、不定愁訴がいくつかあった。

当時使っていたお薬手帳を見ると、アルダクトンA、ラシックス(利尿降圧薬)、レニベース(血圧降下薬)、アーチスト(心筋症治療薬)といった薬を処方されていたようだ。

原因は不明。医師の見立ては、遺伝か後天的なものか。そりゃあそうだ。

ともかく、親類縁者に心臓を患っている人間はいなかったから、わたしは「後天性」を疑った。つまりは生活習慣に問題がある、と踏んだのだ。

糖質制限効果で、心臓病がウソのように消えた

ダメ元で、糖質制限食をやってみることにした。それ以前にも厳しいカロリー制限食をやったりしていたから、食べ物を制限することには慣れていた。敷居は低かった。炭水化物をやめる代わりに、肉や酒を好きなだけ飲み食いできる、というのはむしろありがたかった。

ひと月ほどで効果があらわれた。不整脈が治まってきたのだ。毎食後かならずやってきた不整脈の痛みが減り、そのうち姿を見せなくなった。不定愁訴も消えた。

運動ができるようになった。ラジオ体操から始めて、そのうち毎日1時間のロードワーク。3か月ほどが経過したころ、担当医が検査結果を眺めながら、

「あれえ、全部、正常値だ。もとに戻っちゃってるよ」

素っ頓狂な声をだしたことを忘れられない。わたしは心中でガッツポーズをしていた。

糖質制限の効果は多岐にわたる

以上はわたしのケースである。糖質制限の効果はそれだけにとどまらない。じつに多岐にわたる。

本来のターゲットである糖尿病やメタボ、肥満の改善、ダイエットのほか、美容効果、動脈硬化予防、アレルギーや皮膚疾患の改善、アンチエイジングなどなど、数えあげると枚挙にいとまがない。

糖質制限がどんな病気に効くのか、まずは以下の一覧表に目を通してみてほしい。効果の度合いや、理由についてもざっと解説している。

効果が期待できる疾患

効果の程度
糖尿病

治療効果が確立されており、ドラスチックな改善が期待できる。

メタボ

高い予防、改善効果があることがはっきりしている。

ダイエット

効果絶大。1週間で1~5キロくらい落とせる。わたしも1週間経たないうちに4キロ減った。

動脈硬化

糖質制限食によって、動脈硬化の要因は一掃できる。わたしの心不全も完治した。

心疾患

血流が改善するため、心筋梗塞の予防効果はとても高いといわれている。

脳卒中

血流がよくなることで、脳梗塞の予防効果も見込める。脳出血に関しても、糖質制限食による脂肪の摂取量の増加が改善してくれる。

うつ病

血糖値の急上昇と急降下は、気分の浮き沈みに強く関係している。糖質制限食でうつ病が治るということはないにせよ、多少の改善は期待できるかもしれない。

悪性新生物
(がん)

高血糖やメタボといった生活習慣病が引き金になっているケースでは、予防効果が期待できる。ただし、ウイルスや細菌が引き起こすがん(子宮頸がんや肝臓がんほか)には効果なし。

なお、糖質制限食は免疫力を高めてくれるので、がんの進行を遅らせる可能性はあるという。糖質制限食によるケトン体濃度の上昇が、腫瘍の成長を邪魔する、という報告もあるそうだ。

糖尿病によってがんの発症率が上昇するとわかっている。言い換えれば、糖質制限食で糖尿病がよくなれば、がんの発症率もさがる、ということだ。

こうした点から、糖質制限食には少なからず、がんの予防効果があるといえるだろう。

胃腸障害

逆流性食道炎などでは、糖質制限食開始直後から顕著な効果が見られるという。

アレルギー疾患

ぜんそく、アトピー性皮膚炎、花粉症などの改善効果が見込める。ただし、効果の程度は50~100%と個人差が大きいとのこと。

乾癬

劇的に改善する。1か月程度ではっきりとした効果があらわれるという。

脂漏性皮膚炎

高い改善効果があるという。

美容

全身の血行と代謝が改善するので、自然治癒力がアップ。そのおかげで、肌がきれいになったり、にきびや吹き出物が消滅するケースも少なくない。薄毛が改善したり、髪の毛のツヤとハリがよくなったり、乾燥肌がしっとりしたりと、ほかにもさまざまな効果があらわれるという。

老化

糖質制限食で糖化反応やAGEの産生が減らせることから、老化予防効果にも大きな期待が寄せられている。

ストレス

血糖値の急上昇および乱降下は、気分の落ちこみやイライラの原因になっている。糖質制限食なら精神が安定し、ストレスも減らせる。

虫歯や歯周病

歯垢(プラーク)のエサは糖質だ。糖質制限食なら、プラークが増殖できず、虫歯や歯周病の予防につながる。

糖質制限のメリットについてもっと理解を深めたいなら、以下の記事がおすすめだ。上表のような効果があらわれる理由をさらにくわしく解説している。

いますぐ試してみよう、というのならこの記事。糖質制限のやり方をまとめている。

食べること 糖質制限食(糖質制限ダイエット)のやり方

糖質制限になぜ効果があり、注目を集めるのか

それにしても世界中の人間が主食としてモリモリ食べている炭水化物を、体に悪いから食べてはいけない、病気になるゾ、とかなんとかいっていると、コイツ、パラノイア(迫害妄想)なんじゃないか、と思う向きもあるかもしれない。

葉山
葉山

盆休みに田舎へ帰省して、白米を食べるのをやめた、と宣言したら、わたしの両親は白目をむいていた。

だが、炭水化物中心の食生活は、ホモ・サピエンスとは相性が悪い。このことは、人類史をさっと振り返るだけでも腑に落ちる。われわれのエネルギー代謝システムが、ブドウ糖でなく、脂質を第一エネルギーとして利用するようにできているのがその証拠だ。くわしくは「糖質制限の危険性」に関する記事に書いている。

炭水化物をやめるべき理由はほかに2つある。

糖質の質が変化したから、というのが1点目。もう1点は、現代人の運動量が昔とはまるでちがう、ということである。

糖質制限が必要な理由を描いたイラスト

イラストにあるように、現代の精製穀物や品種改良小麦には、異常な血糖値上昇作用がある。現代人はこうした穀類を昔より多く食べている。にもかかわらず、筋肉労働は減る一方なのだ。このため余分なカロリーをしっかりと燃焼しきることができなくなっている。

精製白米と糖尿病の関連が明らかに
  • 国立がんセンターの研究で、ごはん摂取量と糖尿病リスクの関係が判明。
  • 45~74歳の男女約6万人を5年間追跡調査。
  • 結果、1日お茶碗1杯の人より、2杯の人は1.15倍、3杯は1.48倍、4杯は1.65倍とリスクが上昇していた。
  • なお、筋肉労働や激しいスポーツを1日1時間以上する人には、精製白米による糖尿病のリスク上昇はなかった。

しかも、さきほど書いたように炭水化物からブドウ糖を生成するエネルギー代謝システムは、人間のメインエンジンではない。あくまで補助動力装置だ。人類の歴史をいくら振り返っても、サブエンジンをいまほどフル稼働させたことはなかった。

このことが、われわれ現代人が抱える、あらゆる生活習慣病、不定愁訴の最たる原因となっている。

ヒトの体は、現代のような血糖値の急上昇と急降下に耐えられるようにできていない。だから、血糖値をできるかぎり安定させる、ということが、健康の維持と増進に直結するワケである。

1億総「耐糖能異常」の時代が到来

読者諸兄のなかには、

「主治医からそんな話ひとことも聞いたことないワイ。そんなことで長年患っている糖尿病が治っちまったら世話ないワイ」

と考える向きもあるだろう。しかし、当の先生は、

「こんなことで治っちまったら、世の中医者いらずになって困るワイ」

と考えているかもしれない。

ところで、精製穀類や品種改良小麦などでなく、ひと昔前の日本人が食べていたような玄米や芋類、あるいは蕎麦ならどうなの? 問題ないんじゃないのか、という声もある。

たしかに、玄米は白米ほど血糖値をあげない。白米のGI値は75だが、玄米はGI値66だ。といっても、砂糖のGI値は59だから、それなりに高い。米にくらべると、蕎麦はGI値59、サツマイモはGI値44なので、大量かつ頻繁に食べなければ、さほど問題はないと思われる。

ただし、条件がある。耐糖能異常(ブドウ糖代謝障害)におちいっていなければ、の話だ。耐糖能異常というのは、ブドウ糖を体がうまく処理(代謝)できない状態のこと。食後高血糖やインスリン過剰分泌による糖代謝の乱れがつづくと、やがてだれでも耐糖能異常を引き起こす。

食後血糖値の差のグラフ

このため、精製炭水化物や品種改良小麦を毎日せっせと食べている現代人のほとんどが、程度の差こそあれ、耐糖能異常を抱えている。耐糖能異常が亢進すると、糖尿病の直接原因であるインスリン抵抗性を引き起こす。

耐糖能異常を生じている場合、空腹時の血糖値には異常がないのに食後血糖だけが跳ねあがる。たとえGI値の低い穀類や芋類であっても、身体は大きなダメージを受けてしまう。

自分が耐糖能異常かどうかは、病院で食後血糖値をはかってもらえばすぐわかる。薬局やネット通販では、血糖値測定器も手に入る。

食後2時間の正常な血糖値は140mg/dl未満。この数字がひとつの目安だ。
食べること 糖質制限食(糖質制限ダイエット)のやり方

【イラスト内テキスト】糖質の質が変化! 炭水化物を精製するようになった。吸収効率が飛躍的にあがった。食べると、血糖値が異常に上昇。小麦が品種改良された。20世紀後半の品種改良で、小麦が変化。吸収率がとんでもなく上昇した! 食べると、血糖値が破壊的に上昇。血糖にこれほどのインパクトを与える食品は、昔は存在しなかった。運動量が極端に減った! ホワイトカラーが増え、デスクワーク中心に。現代人の運動量は、戦前の日本人の10分の1。余分なカロリーを使うための運動量が激減。エネルギー摂取と消費のバランスが保てなくなっている。糖尿病、メタボ、動脈硬化、心疾患、高血圧、肝臓病、腎臓病、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、リウマチ、痛風、アルツハイマー、うつ病……生活習慣病の原因。

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