過去、さまざまなダイエット法や健康法が世間をにぎわせてきたが、ブームはいつも一過性、と相場が決まっていた。ところが、この常識をひっくりかえすダイエット&健康法がある。グルテンフリーである。
嚆矢(はじまり)は、ミス・ユニバース・ジャパンの公式栄養コンサルタントを8年間務めていたエリカ・アンギャル女史の本だ。2013年の出版以来、いまも増版を重ねているとか。
わたしは当時からグルテンフリーのなんたるかをよく知っていた。日本の女性たちは、エリカ女史をグルテン教の開祖と思いこんでいるふしがあるが、グルテンフリーは10年前、米国で産声をあげたものなのだ。
グルテンフリーダイエット(詳細は以下の記事)を実践、信奉するセレブも多い。
キリがないからこの辺でやめておくが、彼らがはからずも広告塔となり、またたく間に全米に広がったのだ。それが、エリカ女史の手で、この国に持ちこまれたわけである。
日本上陸からすでに数年経過。日本初のグルテンフリー専門サイトを2014年の夏に立ちあげたわたしが、これまで耳にしただけでも、グルテンフリーによって、
- やせた
- 肌がきれいになった
- ニキビが治った
- 集中力があがった
- 異常な食欲がなくなった
- 偏頭痛が治った
- 腎臓病が緩解した
- 関節炎、リウマチがよくなった
- アレルギーが治った
- アトピーが改善した
という人びとが続出している。
かくいうわたし自身、グルテンフリーと糖質制限(グルテンフリーの延長線上にある食事療法)を組み合わせることで持病が治ってしまったからして、その可能性については身をもって体験ずみだ。
というわけで、グルテンフリーがもたらす効果をまずはお話しする。
グルテンフリーの効果
米国では、セリアック病やグルテンアレルギーの治療目的で産声をあげたグルテンフリー食であるが、いまでは一般の人々の熱視線を浴びている。これほど多くの効果が見込めるからだろう。
対象となる人 | わかっている効果 |
---|---|
グルテン過敏症、セリアック病の人 | 慢性的な下痢、腹痛、重度の栄養失調が治まる |
関節炎、偏頭痛の改善、解消 | |
糖尿病や肝臓病ほか生活習慣病の改善 | |
ぜんそく、花粉症、アトピー性皮膚炎、リウマチなどのアレルギー疾患、自己免疫疾患の改善、解消 | |
疱疹状皮膚炎や乾癬など皮膚疾患の改善、解消 | |
神経障害の改善 | |
不妊の改善 | |
統合失調症や自閉症など精神疾患の改善 | |
すべての人 | メタボ(内臓脂肪)の改善、解消 |
糖尿病の予防、改善、解消 | |
動脈硬化、血流障害の改善、解消 | |
脳梗塞や心筋梗塞などの予防 | |
老化防止(アンチエイジング効果) | |
認知症の予防、改善 | |
骨粗しょう症の予防、改善 | |
がんの予防 | |
ぜんそくや蕁麻疹、アトピー、運動誘発性アナフィラキシーほかアレルギー疾患の改善、解消 | |
風邪を引きにくくなる(免疫力アップ) | |
関節や肺が健康になる | |
腸の働きがよくなる | |
活力アップ、集中力アップ | |
肌がきれいになる、にきびや吹き出物が減る | |
快眠――ぐっすり眠れるようになる | |
劇的にやせる(ダイエット効果) |
もっとくわしく知りたいなら、この2つの記事をおすすめする。
次のなかに現在抱えている健康トラブルに該当するものがあるなら、ぜひじっくり目を落としてみてほしい。上表のような効果があらわれる理由がわかる。
ダイエット効果だけでなく、生活習慣病の予防と改善に役立つ。本質的、という点が、グルテンフリーの醍醐味なのである。
グルテンフリーの方法
グルテンとは、おもに小麦に含まれるたんぱく質。こいつを食卓から完全に閉めだそうというのがグルテンフリーである。
さきほども書いたが、本来の目的はグルテンが引きおこす疾患の治療だ。だが、そうでなくともメリットは多い。手短にいってしまうと、小麦をやめるだけで、身体のなかから真に健康になれるというわけである。
ダイエット法という点で見ても、ほかのダイエット法とは異なり、身体に負担をかけず健康的にやせられると評判。だから世界中のセレブや女性たちから高い関心を集めているのだ。
- 「何千人もの診察と治療をしてきたわたしは、ベルトに覆いかぶさるほど突出していた脂肪が、小麦を断ったことで消えるのを目の当たりにした」
- 「大抵、最初の2~3か月で10、15、20キロの体重が減った」
- 「無理なく急激に体重は落ち、健康状態がよくなる様子を何千回も目にして驚くばかり」
- 「炭水化物、とくに小麦を食べないことで、多くの場合、糖尿病を治すことができる」
- 「潰瘍性大腸炎で大腸切除を迫られていた中年女性は、切らずに完治した」
- 「20代の男性は関節炎で歩けなかったのに完全に回復した」
- 「患者たちは、活力がみなぎり、集中力があがり、睡眠が深くなった」
- 「何年もあった発疹が消え、リウマチの痛みが改善したり消えたりした」
- 「しかも、こうした事実は何度も繰り返された」
それでは、わたしがおこなっていたグルテンフリー食のやり方をさっそく紹介しよう。
海外サイト中心にいくつかの書物などを参考にしながら、日本人にマッチするようカスタマイズした。狙いは、生活習慣病の予防と改善だ。なお、明確な自覚症状がなくても、われわれはみな潜在的グルテンアレルギー患者である可能性がある。その点も考慮した。
グルテンフリーで、食べていいものと食べてはいけないもの
難しい話ではない。3度の飯からグルテンを抜けばいいだけ。この表にある、グルテンを含まない食品を選んで食べていればそれでOK。これを最低3週間つづける。その理由は後述する。
主食 | 主菜 | 副菜 | デザート、間食ほか | |
---|---|---|---|---|
食べるべき 食品 | 白米 玄米 餅 ビーフン フォー 春雨 そば(十割) 雑穀(あわ、きび) キヌア モロコシ トウモロコシ 芋類 | 肉 ハム ソーセージ ベーコン 卵 魚介類 豆腐、納豆 | 野菜 豆類 こんにゃく 海藻 きのこ ハーブ たまり醤油 キヌア醤油 米味噌 純米酢 バルサミコ酢 片栗粉 くず粉 コーンスターチ | フルーツ ドライフルーツ チーズ ヨーグルト バター 生クリーム 牛乳 ナッツ類 種子類 ココナッツ タピオカ だんご 大福 ゼリー チョコレート ポップコーン 蜂蜜 メーブルシロップ |
食べては いけない食品 | パン パンケーキ ホットケーキ パスタ ピザ うどん 素麺 ラーメン 焼きそば クスクス コーンフレーク ミューズリー オートミール そば(十割以外) | ハンバーグ 唐揚げ フライ 天ぷら カレー シチュー 餃子 焼売 ワンタン 春巻 | お麩 クルトン マカロニ 醤油 麦味噌 ダシ入り味噌 穀物酢 | ベーグル マフィン クッキー クラッカー スコーン ドーナツ ケーキ パイ あんまん 中華まん アイスのコーン スナック菓子 ビール 発泡酒 |
なるべく新鮮で加工されていない食品を食べるのが基本。ローフード(生)なら、なおよし。NG食品は、グルテンを含む可能性が高いものであり、すべてにグルテンが含まれているわけではない点にご注意を。
画像は、グルテンフリー食ビギナーの方のための買い物リストだ。ひと目で、買ってもいい食品とダメな食品がわかる。
クリックすれば、A4サイズの印刷に対応した高解像度版が表示される。つくるのにけっこう骨を折った。なるべく多くの人にプリントアウトして使っていただけるとうれしい。
グルテンはここに挙げた食品ばかりでなく、さまざまな加工食品の結着材料として、あるいは健康食品やサプリメント、化粧品、医薬品などに含まれることも多い。買い物の際はかならず製品ラベル(原材料表示)を確認するという習慣を身につけることが大切だ。
海外のように、スーパーにグルテンフリー食品のコーナーがあったり、パッケージにきちんと「グルテンフリー」と書いてくれていれば、そういう面倒もなくなるのだが――。
グルテンフリー開始後に訪れる体調変化
1週目:禁断症状がやってくる
グルテンフリー食を開始すると、疲労感やいらいらを感じることがある。小麦は中枢神経に働きかけるモルヒネ様物質を含むためである。急に食べるのをやめると、3割程度は禁断症状を味わうことになるといわれている。
事実、わたしも集中力や記憶力が落ち、頭はぼんやり、身体に力が入らない、という日々を体験した。
でも、ご安心を。禁断症状は数日から数週間でかならずおさまる。タバコや酒のような、強烈な欲求が襲ってくるわけでもない。多少、心身のポテンシャルが低下するだけだ。
グルテンフリー食にまつわる問題はすべて、短い時間とわずかな忍耐と想像力で解決できるので、心配はいらない。
禁断症状が強く出る場合は、グルテンアレルギーの可能性が高いという。そのぶん、グルテンフリー食の効果もはっきりあらわれるということなので、この先の変化を楽しみに待とう。
2週目:小麦断ちによるストレスに対抗する方法
2週目に入ると、禁断症状がおさまる人も出てくる。ともかくは新しいライフスタイルに心身が適応してくる。少しずつ、体調がよくなってくるのを感じる人もいる。
その代わり、慣れや飽きを感じることもあるはずだ。あるいは、小麦食品をやめたことへのストレスが表面化してくることもある。なにしろ、小麦は地球上で一番優秀な――つまり安価なエネルギー供給源。全人類の消費カロリーの20%を占めている。普通に暮らしていれば、小麦食品が四六時中、視界に飛びこんでくる。スーパーなど、まるで小麦爆弾の地雷原だ。
しかし、そこは視点を切り替えて、ポジティブにいこう。
小麦を使った食品には、食品添加物や悪い油たっぷりの加工食品やレトルト食品、スナック菓子、ジャンクフードなどが少なくない。そういうもので腹を満たしていたころは眼に入らなかったうまい食べ物が、じつは世の中にはごまんとあることに気づくはずだ。視野を広げてみてほしい。
わたしは、グルテンフリー食のおかげで生ナッツの滋味を知った。ワインやチーズの奥深さを学んだ。米粉でパンを焼き、夜食にはラーメンでなくフォーを食べ、パン粉なしハンバーグ料理に挑戦したりと(絶品だ)、創意工夫する楽しみを味わった。
禁断症状やストレスが強くあらわれるようなら、男性なら映画鑑賞や芸術鑑賞、スポーツ観戦などで気分転換をはかるといい。家族との時間を増やす手もある。体を動かすのもいい。この時期、わたしはローラーブレードにハマり、小麦のことなどすっかり忘れてしまった。女性なら、ヨガやエステに足を運ぶのも、気分転換にはうってつけだ。
3週目:効果を実感
そうやってつづけているうち、わたしは小麦と自然に手が切れた。タバコや酒をやめるよりよほど簡単だった。
体調にはっきりとした変化を感じたのもこの時期だった。食後の膨満感やゲップ、胃酸の逆流で悩んでいたのがウソのように解消した。便通はスッキリ、肌トラブルも解消していたりと、うれしい変化をいくつも実感することになった。
食事の量がかなり減ったことにも驚いた。小麦の中毒性から開放されたのだろうか。コロンビア大学消化器内科の研究によると、小麦をやめるだけで1日のカロリー摂取量が350~400kcalも減ることがわかっている。
このため、グルテンフリー食を始めると、2週間で2kgの減量、3か月で10kgの減量に成功した、というケースもめずらしくないそうだ。もともと痩せていたからか、わたしは体重に変化を感じなかったが、わたしのパートナーは3週間で5kgキロもやせていた。
ただし、すでにメタボと診断されていたり、相当な肥満を抱えているなら、グルテンフリーでは力不足。本格的なダイエットにグルテンフリーは向かない。糖質制限食のほうが適しているだろう。
グルテンフリーは最低でも3週間は続ける
グルテンフリー食を実践してみようというなら、最低3週間は続けるべきだ。グルテンは摂取後2~72時間後にIgG抗体が出現し、血中で21日間も活性しつづけるからだ。人によっては、グルテンをやめて3か月間くらい不調がつづくことがあるという。
わたしの場合、3週間で変化があらわれたものの、グルテンアレルギーだったのかどうかはわからない。グルテンをやめると体調がいい、ということがわかっただけでも大きな収穫といえるが、いずれ折を見て、グルテンのIgG抗体検査をしてみようと考えている。
厳密にグルテンフリー食品だけを食べる必要がある。たった1枚のクラッカーが重大な症状を引き起こす可能性もあるからだ。重症の場合、食事療法にプラスして、免疫系を抑制する薬剤の処方が必要になることもあるそうだ。いずれにしろ、セリアック病の方や、その疑いのある方は、かならず医師に相談してほしい。断っておくが、この記事は、セリアック病や小麦アレルギーを対象にしていない。
この記事もぜひご覧いただきたい。グルテンフリーが手軽に手に入るショップやおすすめの食品を厳選してご紹介している。
う、うまい! グルテンフリー食品のおすすめ グルテンフリーに便利なネット通販ショップ10選!参考/米国食品医薬品局(http://www.fda.gov/)、MAYO CLINIC(http://www.mayoclinic.org/)
はじめまして。
今朝こちらを発見できて、「生きていける!」という気がしました!
ほんとに良かった。。。毎日食べることが怖く困っていました。
ここ7~8年徐々に悪くなっていたのに、あまり真剣に向き合っていませんでした(反省)
貴重な情報と体験談など、本当にありがとうございます。
これからもう少し勉強して、自分の体を大切に取り組んでいきたいです。
とりあえず、今日は食べれるものを買ってきます!(笑)
感謝申し上げます!
いえいえ、とんでもないです。でも、お役に立てたのならとてもうれしいです。コメント、ありがとうございました。
50歳を越えていきなり小麦アレルギーを発症してしまい、今まで当たり前に食べていたものが食べられず、困り果てていたところにこのサイトを見つけました。基礎知識から得ることができ感謝しています。悪いことばかりではなく、ダイエット効果や成人病予防にもなるとのこと。むしろ楽しんでやってみようかと気持ちを切り替えることができました。ありがとうございました。
いえいえ、めっそうもありません。みゆきさんのような方のお役に立てればなあ、という思いで開設したサイトです。こうしたコメントを頂戴すると本当にうれしいです。こちらこそ、ありがとうございました。葉山拝
初めまして。いとこからグルテンフリーの話を聞いて葉山さんのサイトにたどり着きました。フリー生活始めてまだ1週間程です。更年期に差し掛かったのもありますが、肌質が弱く、無理すると途端湿疹がでてずっと皮膚科通いの日々です。また人生のリベンジでスキルアップ目指して通信大学に来年から仕事と両立して通おうと思ってます。私の体調不良は、グルテンも一因なのかな?と思い当たり、葉山さんのサイトこれからも参考にさせて頂きますのでよろしくお願いします。
はじめまして。コメント、ありがとうございました。通信大学ですかあ。いいですね。失礼ながら、自分より(たぶん)お年を召されている方がなにかにチャレンジされる姿、とても励みになります。元気をもらえます。不定愁訴、はやくよくなることをお祈りしております。無理せずどうぞがんばってくださいませ。
最近、皮膚がアトピー様にガサガサし暴飲暴食で太り過ぎで調子がよくないと感じていました。葉山さんの記事を読み、聞いた事がある程度のグルテンフリーの記事を読み大変参考になりました。私も少しずつ勉強しながら、グルテンフリーにチャレンジして体質改善に取り組みたいと思いました。これからも、いろいろな情報楽しみにしています。
コメント、どうもありがとうございました。がんばってくださいね^^
こんにちは
朝食は毎日パンでした。大好きなパンですが、我慢ですね。
最近グルテンが良くないことを知り、ネットを見るに、グルテンが含まれる食品のなんと多いこと。そして、グルテンフリーの食品の高いこと。
葉山さんのこの記事を拝見し、食事を変えてみようと思いますが、外食などで「つい」や「言い出せなかった」などで食べてしまった場合、普段の努力は水の泡で、また1からなのでしょうか。
そんなことはありません。問題は小麦漬けの食生活であって、グルテンフリーを意識しながら暮らすというだけでも十分に意味はあると感じますよ。
こんにちは。オーストラリア在住で5歳児がグルテン不耐性の様です。お医者様からは除去を進められなかった為与えて続けていたら慢性蕁麻疹になってしまいました。4月からグルテンフリー食にして8ヶ月です。グルテンを食べると軟便で便器にへばりついて中々取れません。セリアックの血液検査は陰性でしたがGeneテストは陽性でした。どこに行くのもお弁当持参でパーティーでもケーキも食べれないのでかわいそうです。この先治して少しは食べれるようになれればいいと思っているのですがどうすればよいかよく分かるません。ご意見いただけないでしょうか。
こんばんは。小麦や大豆に過敏に反応するお子さん、最近多いですね⋯⋯。私は医療従事者ではありませんので、自分がAikoさんならどうするかな、という視点で頭に浮かんだことをそのまま書きます。以下はあくまで個人の見解であることをお含みおきください。
グルテンにかぎらず食物の不耐症は腸内細菌叢のアンバランスから起きる、と私は感じています。ひらたくいうと腸内にカビや酵母、その他病原菌が繁殖し、相対的にいわゆる善玉菌——ビフィズス菌や乳酸菌が減っているわけです。すると腸内に毒素が充満、腸粘膜がただれ、毒素や食べ物が血流に乗って体内に侵入してしまう。腸内環境の悪化はさまざまな症状を引き起こします。アレルギーもそのひとつ。糖質、とくに小麦はこの状況を加速させます。
だから糖質(とくに小麦と砂糖)をひとまず完全に除去します。とはいえ成長期に糖質を完全にやめるのは難しいので、糖質は全粒穀物から摂取。玄米やオートミールなどですね。あとイモ類もOK。さらに手づくりの発酵食品(ぬか漬け、ザワークラウト、納豆など)を毎日食べさせます。ビフィズス菌も必要ですので、こちらはヨーグルトかサプリで。それから善玉菌の餌になる食物繊維。葉物野菜、こんにゃく、ごぼう、海藻類などですかね。
普段使いの油にも注意します。調理油にはオリーブオイル。ドレッシングにはアマニ油やえごま油。トランス脂肪酸は厳禁。リノール酸の多い油も避けます。
とにかく一にも二にも腸内をきれいにする食生活、それに尽きます。いずれにしろ、親御さんが正しい食事についてきちんと勉強し理解しておくことが不可欠ですね。どうかお大事になさってあげてください。
葉山拝