動脈硬化は、心臓病の最大の敵だ。
原因は、
老化型 | 中動脈に老人性の石灰化が起こる現象。 |
粥腫型 | 粥腫型 |
細動脈型 | 動脈末端の細動脈が高血圧などの影響で硬化する。 |
この3つのうち、心臓や脳などに病変を起こす、とくに悪質なものは粥腫型と細動脈型だ。とりわけ、粥腫型――アテローム変性で命を落とす人は多い。
アテローム変性による動脈硬化は30代から起こる。ストレスフルな仕事人間や食道楽、肥満人、糖尿人などにひんぱんに見られるもので、心臓病の多いアメリカなどは、このタイプが主流。
ここでアテローム変性の原因を調べてみよう。わが家の書棚にドカンと居座って、ほこりをかぶっている『家庭の医学』を引いてみた――。
そこにあったのは、外箱同様ほこりにまみれた、一昔前の古びた記述だった。
動脈硬化はコレステロールではなく、糖質が引きおこす
引用文にもあるように、コレステロールは、細胞膜やホルモンなどの材料になる、人体にとって不可欠な物質だ。LDLはこれを必要な組織に運搬しているにすぎない。
LDLやコレステロールが悪玉という説はまちがいだ。これは、日本動脈硬化学会のガイドラインから、「脂質異常性」の診断基準にあった総コレステロール値が消えたことからも明らか。本当の原因は、LDLのサイズ、そして肝臓でのVLDL(後述)生成量にあったのだ。
小粒子LDLが糖化や酸化を起こし、アテローム化
LDLには粒子の大きいものと小さいものがある。アテローム変性の原因になるのは、密度の高い小粒子のLDLだ。小粒子LDLはブドウ糖と結合して糖化したり酸化したりする性質が強いからだ。
糖化や酸化を起こすと、貪食細胞に異物とみなされ食べられてしまう。これがアテロームになるのは、『家庭の医学』に書いてあるとおり。つまり、小粒子LDLが体内に増えると、心臓病にかかりやすくなるワケだ。
コレステロールはたまたまそのLDLに含まれていたにすぎない。偶然、犯罪現場を通りかかり、犯人に祭りあげられてしまった、あわれなえん罪被害者のようなものだ。
ちなみに、大粒子LDLも小粒子LDLも、VLDLという超低比重リポたんぱくからつくられる。この比率は食生活で変わる。糖質過多の食事が小粒子LDLを増やすのだ。臨床現場では心臓病患者の90%に小粒子LDL優位がみつかったこともあるという。
糖質摂取で小粒子LDLの親であるVLDLが増える
VLDLは、肝臓で生まれる。
糖質過多の食生活は、VLDLの生成量をどんどん増やすことがわかっている。
糖質を食べすぎると動脈硬化が進み、心疾患や脳疾患リスクが高まる
小麦や精製炭水化物を気ままに食べていると、心臓病や心筋梗塞といった心疾患、あるいは脳梗塞などの脳疾患のリスクが確実に高まることがおわかりいただけだろうか。
なお、『家庭の医学』の名誉のため、正確で役に立つ記述をひとつ、引用しておこう。
「トリグリセリド」という、日常生活で耳にすることのない言葉が登場してきたので、念のため説明しておこう。
トリグリセリドは脂肪内に貯蔵されているエネルギー源。食物脂肪に多く含まれているため、昔は「肉の脂やバターを食べすぎると動脈硬化になるゾ」と脅されたものだが、現在は食物脂肪によるトリグリセリド値の上昇は気にする必要がないことがわかっている。
それよりも注意すべきなのが、体内での高濃度トリグリセリド生成をうながす食品である。そう、察しのとおりだ。炭水化物である。
糖質と動脈硬化の関係に関する結論
そろそろ、きょうの結論といこう。
心臓病などの引き金となる動脈硬化の予防および改善には、グルテンフリー食か、さらに厳しく糖質を制限する糖質制限食がうってつけ。
だらだらと説明してきたが、糖質が心臓病、とくに虚血性心疾患の引き金になることは九州大学大学院のホームページ(現在はそのページが削除されている)にしっかりと書いてある。
蛇足ながら、わりとシリアスな心臓病を疑われたわたしは、この2つの食事療法のおかげで、いまでは心不全、心肥大、不整脈の状態から完璧に脱している。
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