江部康二という医師がいる。糖尿票患者にとってこの人は菩薩だ。
空腹時の血糖値だけを問題視する、現在の糖尿病治療ガイドラインにしたがっていたら、糖尿病がよくなることはほとんどない。
というのも、糖尿病の発症および悪化要因は、
- 食後に血糖値が急激にあがること
- 血糖値をさげるため、インスリンが過剰に分泌されること
- インスリンが血糖を内臓脂肪にしてお腹に溜めこむこと
- ①~③が原因で、身体がインスリンに反応しなくなっていくこと
この4つとはっきりわかっている。
そして、①②③④が起こすきっかけは常に糖質の摂取だ。だのに、糖質ではなく、カロリーにばかり目を向ける現在の治療法の不合理。炭水化物を食べて糖尿病になったのなら、今日から炭水化物など一切食べなければいいのではなかろうか。
ただ、そうは思っても、あまりにも突拍子がなく、現実味にとぼしい。なにしろ、生まれてこの方、わたしたちは来る日も来る日もせっせと炭水化物を口にしてきたのだ。「ちゃんとごはん食べないと大きくなれないよ」といわれて大きくなったのだ。糖質は、人間の大事なエネルギー源なのだ。食べなければ、肉体がガス欠を起こす、そう信じこんでいる。
実際にやってみようという英断をくだせる人間はまずいない。
江部先生は、そこへメスを入れた。
江部先生が理事長を務める高雄病院に初めて糖質制限食を導入したのは、お兄さんの江部洋一郎氏。
糖質制限が科学的に、医学的にまちがいではないことを論理的に説明し、みずから実践して糖尿病とメタボが克服できるということを証明してみせた。
この先生の著書をたくさん読んだ。溜飲がさがる思いがしたものだ。これまで抱えていた疑問が氷解し、目の前がすっきり開けたのだ。
常識をひっくりかえした偉業に敬礼!
常識的に考えて、医者が「主食をやめろ」「米を食べるな」「あれば体に害だ」などと口にしようものなら、昔なら頭がいかれたかヤブだと思われたにちがいない。仲間内や関係機関から干されていたかもしれない。
時代が変わったとはいえ、そうした点で、江部先生が糖質制限食を臨床の現場に取り入れ、学術的にその効果を確立させたのは偉業だ。
俺にもできた、そういう医師もいるだろうが、これはコペ転(コペルニクス的転回)だ。
京都(江部先生率いる高雄病院の所在地)に足を向けて寝られない人は多いにちがいない。わたしもそのひとりだ。
糖質制限食(糖質制限ダイエット)のやり方