LGG乳酸菌(ラムノサス菌)の効果~肌や内臓のトラブルから食物アレルギー、感染症までを改善

あなたの身体は、あなただけのものではない。

ヒトの身体には、自分の細胞より多くの微生物が暮らしている。彼らにとってあなたの肉体は、あなたにとっての地球のような存在である。

20世紀以降、世界人口の急増が生態系バランスを崩し、環境汚染が急速に進行している。多くの種が絶滅に追いやられている。地球は病んでいる。

同じことが、わたしたちの体内でも起きている。

化学物質まみれの食品、過度に精製された食べ物、抗生物質の乱用などが、体内の生態系バランス——微生物叢に影響を与え、身体全体を蝕んでいる。

とくに腸に棲む細菌たちの役割は重要だ。

わたしたちの健康の鍵を握っているからだ。

もしいま、あなたが何らかの体調不良に襲われているなら、手始めに腸内の微生物に目を向けてみるといいかもしれない。

そのときは、ラクトバチルス・ラムノサス(LGG乳酸菌として有名)という乳酸菌にぜひ注目してほしい。

ラクトバチルス・ラムノサス(LGG乳酸菌)は、ヒトの腸内常在菌

LGG乳酸菌、すなわちラクトバチルス・ラムノサス菌(以下、ラムノサス菌)は、ヒトの腸内を棲み家とする、グラム陽性の乳酸菌である。

プロバイオティクスなどに用いられるラムノサス菌は、ルーツをさかのぼると、健康な2人の男性の腸にたどりつく。彼らの腸内から採取、分離したものなのである。

葉山

LGGの「GG」は、その男性たちの名前の頭文字をならべたものだ。

もともとヒトの腸にいたバクテリアだから、安全性は高い。このため健康補助食品やヨーグルトなどに幅広く用いられているのだ。

ラムノサス菌(LGG乳酸菌)の特徴

ラムノサス菌はわれわれの健康にさまざまな側面から貢献してくれている。

免疫システムを強化し、バランスを調整してくれる。アレルギー疾患や皮膚炎、喘息、アトピーなどに有益。消化器の健康回復、維持、増進にも役立つ。

肌をきれいにする、という働きは、女性たちに注目されている。

アメリカ皮膚科学会(AAD)も、肌の炎症を抑え、湿疹やニキビといった皮膚疾患を治癒させるすぐれた方法として、プロバイオティクスを高く評価している。

研究で解明されている、ラムノサス菌の健康機能をここからくわしく見ていくことにする。

ラムノサス菌(LGG乳酸菌)の効果

ラムノサス菌が闘うバクテリア、ウイルス

ラムノサス菌は、あなたの身体に侵入、繁殖しようとするバクテリアやウイルスと闘ってくれる。

現在までの研究で判明しているだけでも、これだけある。

  • インフルエンザウイルス[参]
  • 食中毒菌(ロタウイルスなど)[参]
  • ヘルペス菌[参]
  • カンジダ菌[参]
  • アスペルギルス菌[参]
  • グラム陰性菌(緑膿菌)[参]
  • 肺炎球菌参[参]
  • 虫歯菌(ミュータンス菌)[参]

消化器トラブルを改善

日本では消化器系のトラブルにプロバイオティクスが処方されることはあまりないが、海外ではすでにポピュラー。胃腸の感染症や下痢の治療などで用いられている。

そうしたケースにおいて、ラムノサス菌はおもな選択肢のひとつである。

胃腸障害

子どもにラムノサス菌を投与すると、胃腸感染症に罹患するリスクが低くなる。子どもの機能性胃腸障害の症状を軽くすることも研究でわかっている。[参][参]

マウスの実験では、ストレスに起因する、腸の運動機能障害の治療にも有効だったそうだ。[参]

下痢

抗生物質を服用すると、副作用として下痢を起こしやすい。こうした場合の下痢を、ラムノサス菌は大幅に抑制する。ロタウイルスが引き起こす下痢も強力に抑えてくれる。[参][参]

潰瘍

ラムノサス菌は、胃潰瘍の治癒を早める(ただし動物実験)。[参]

過敏性腸症候群(IBS)

デンマークの臨床試験において、ラムノサス菌は過敏性腸症候群(IBS)患者の重症度をさげ、QOLを改善させた。[参][参]

細菌、カンジダ感染

ラムノサス菌には、腸内の細菌感染を抑制する力もある。

早産の赤ちゃんの腸内におけるカンジダ繁殖や、子どもの細菌性大腸炎を予防することが研究でわかっているのだ。[参]

寄生虫感染

寄生虫の排除を手助けすることもわかった(ただしマウスの実験である)。[参]

肝機能障害を改善

中国の研究者らは、ラムノサス菌がアルコールによる肝機能障害から肝臓を保護することをつきとめた。ほかの乳酸菌や薬剤と比較して、より酸化ストレスを減らし、腸内細菌叢を回復させる力が強かったという。[参][参]

葉山

世の左利き(呑兵衛)には吉報だ。

マウスの実験ではさらに、ラムノサス菌が脂肪肝を予防することも示されている。[参]

糖尿病を改善

これもマウスの実験だが、ラムノサス菌の投与によって、血糖値の上昇が抑えられたという。さらにインスリン感受性を高め、耐糖能異常を改善したそうだ。[参]

呼吸器感染を抑制

呼吸器感染のリスクを軽減させる効果も高い。

子どもへの臨床研究では、気道感染や呼吸器疾患の発症率をさげることがわかっている。そのほか、入院患者の人工呼吸器関連の肺炎のリスクを減らすこともわかっている。[参][参][参][参]

ガンを改善

ラムノサス菌には胃ガンや結腸ガン、直腸がんのガン細胞の増殖を抑制し、アポトーシス(死滅)を促進させる働きがある。生きた菌でなく死菌でも同様の効果が得られるのは興味深い。[参][参]

別の実験でも、頸部や結腸のガン細胞を破壊することが示されている。[参]

ラムノサス菌が腫瘍や、ガンの前兆としての病変の発生を抑えることは、動物やヒトの細胞による実験で証明ずみ。ラムノサス菌には抗腫瘍作用がある。[参]

皮膚トラブルを癒やす

肌によい効果をもたらす、というのも、見逃せないラムノサス菌の特徴だろう。

ニキビ

ラムノサス菌にはまた、大人ニキビを改善する働きがある。[参]

湿疹

ラムノサス菌を子どもに投与すると、湿疹の有病率が優位に低下する。[参]

オーストラリアとニュージーランドの研究によれば、ラムノサス菌の摂取によって、乳児の湿疹の発症率が低下したそうだ。しかもそれは生後6年間も持続した。[参]

さらにこの研究では、子どものアトピー性皮膚炎発症率を低下させる可能性も示唆されている。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎を発症した子ども(生後4か月〜4歳)の症状を軽くする効果もあった。[参]

家族にアトピー性皮膚炎の既往歴があるケースで、出生前の母親と出生後の赤ちゃんにラムノサス菌を投与したところ、湿疹の発症率はあきらかに低下したという。[参]

そればかりか、妊娠中の女性がラムノサス菌を服用することで、生まれてきた赤ちゃんの腸内細菌叢はビフィズス菌優位(健康的)となり、免疫システムの健全化に役立つこともわかっている。その結果、子どもの寿命が延びる可能性もあることが示されている。[参][参]

アレルギーの抑制

アレルギーを抑制したり、免疫寛容を促進したりする働きもある。

食物アレルギー

子どものピーナッツアレルギーの症状を軽減させること、赤ちゃんの牛乳アレルギーの免疫寛容の獲得を加速させることもわかっている。アレルギー性鼻炎の子どもの症状を軽くする働きもあったそうだ。[参][参][参][参]

大人の牛乳過敏症においても、症状の緩和に役立つという報告がある。[参]

いちばんいいのは、生後早い段階でラムノサス菌を摂取することである。食物アレルギーの予防になるからだ。[参]

喘息

マウスの実験では、ラムノサス菌にアレルギー性喘息の症状をやわらげる抗炎症作用があることがわかっている。[参][参]

虫歯を抑える

ラムノサス菌には虫歯菌(ミュータンス菌)の増殖を抑制する効果があり、長期摂取によって虫歯の発生を減らす効果がある。[参][参]

抗炎症作用

炎症を軽減させる効果も高い。ラットやヒトの研究で、炎症を減らす作用があることがわかっている。[参][参]

膣炎

海外ではラムノサス菌を使用した膣錠が製品化されており、細菌性膣炎の再発を抑制する、効果的かつリスクのない治療薬として広く認知されている。[参]

農薬の毒性を減らす

ラムノサス菌は、有機リン系の農薬の吸収および毒性を低下させる可能性がある。キイロショウジョウバエを使った実験では、農薬による死亡率が有意に低下したという。[参]

免疫力を高める

動物実験において、ラムノサス菌はマウスの免疫力を高めた。[参]

精神疾患を改善

ラムノサス菌は、強迫性障害(強迫神経症)やうつ病、不安障害などを軽減できる可能性があることが指摘されている。[参][参][参]

ダイエット効果

ラムノサス菌には肥満を抑える力がある。体脂肪率を減少させ、体重を減らすといったダイエット効果がある。[参][参]

ラムノサス菌摂取の安全性

ヒト由来の乳酸菌であり、安全性はきわめて高い。[参][参]

ただしほかのプロバイオティクス同様、免疫システムや腸管バリアに何らかのトラブルを抱えているケースでは、服用は推奨されない。感染症を引き起こす可能性がないとはいえないからだ。[参][参][参]

参考 ラムノサス菌のプロバイオティクスFOODHACK

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