バイオフィルムは、微生物がわれわれの免疫系から身をかわし、サバイバルするための保護膜だ。ヒトの免疫系だけでなく、人類が開発した抗菌剤でも歯が立たない。
たとえば病原性の細菌や真菌、寄生虫などが腸内につくるバイオフィルムは、接着剤のように腸粘膜にくっつき、病原体のコロニーの周囲にEPSを形成している。
✔EPS(細胞外ポリマー)とは?
説明しよう。ポリマーとは高分子化合物のことであり、細胞外ポリマー(以下、EPS)は微生物が自分たちの住居を建築するために分泌する物質のことなのだ。EPSはバイオフィルムの最大90%を占める。主な材料は、多糖類とたんぱく質で、脂質やDNAなども含んでいる。EPSの性質をひと言で表現すると「ゴム」。病原菌たちがゴムの中に隠れているところを想像してほしい。バイオフィルムがいかにやっかいな代物かおわかりいただけただろう。
病原体が定着しバイオフィルムをつくりだすと、除去は非常に困難となる。時間が経てば経つほど、彼らの隠れ家の外壁は頑丈になり、完全性が高まっていくからだ。
バイオフィルムは、病原体のさらなる成長と増殖、そして領土の拡大を加速させる。放置すれば、病原体のコロニーは消化管全体にどんどん広がっていくのである。
③の段階までなら食生活に気をつけたり、プロバイオフィクスを摂取することで、バイオフィルムを縮小、消滅させることもできる。しかし成熟したバイオフィルムがいったん完成すると(④の段階)、プロセスは不可逆的となる。つまり除去はほぼ不可能となる。
そしてバイオフィルムを分解、除去しないかぎり、抗菌剤やプロバイオティクスなどで病原体を一時的に減らして症状が回復しても、再発のリスクはその後の人生にずっとつきまとう。
カンジダのバイオフィルムを除去する方法(天然成分)
バイオフィルムを取り除く手立てがまったくないわけではない。医学的アプローチでは現状は不可能だが、科学の最新の研究成果をうまく活用すれば、かなりの確率で除去が可能となっている。
見出しに「カンジダのバイオフィルム」と書いたが、ほかの病原体のバイオフィルムも基本構造は同じである。カンジダ以外の真菌、細菌、寄生虫の感染にもこの記事の内容は適用可能だ。
オレガノオイル
オレガノオイルは古くから、消化管に巣くう病原体の駆除に用いられてきた。カンジダの治療薬としても一般的である。
オレガノの有効成分のカルバクロールはすでに十分に研究されており、健康メリットが多数見つかっている。[参][参]
- 細菌、真菌、ウイルス、寄生虫を抑制する
- 耐性菌に効果がある
- 病原体の毒素産生を阻害する
- 抗炎症、鎮痛、関節炎抑制、抗アレルギー、抗発抑制
- 心臓、胃、肝臓、神経の保護
さらに注目なのは、カルバクロールにはバイオフィルム形成を阻害するだけでなく、縮小させる効果もあることだろう。ある研究では、バイオフィルムの細胞の剥離を促し、保護膜(EPS)を薄くすることで、構造体を脆くする働きがあることがわかった。[参][参]
別の研究では、一定濃度のオレガノオイルがバイオフィルムを根絶したという。[参]
さらに別の研究でも、オレガノオイルはバイオフィルムを完全に不活性化し、内部の病原菌を殺した。耐性菌が生じることもなかったそうだ。[参]
オレガノオイル/オレガノ精油(有効成分カルバクロール70%)+オリーブ油、抗真菌、抗カンジダ、29.57ml、2600円前後にんにく
にんにくは広域抗菌スペクトルを有する食品だ。つまりカンジダなどの真菌、あるいは細菌、ウイルス、寄生虫まで、幅広い病原体を殺すことができる。
活性成分のアリシンは、医薬品への耐性を持つ菌株を殺す能力があるだけでなく、バイオフィルムの形成を抑制することもわかっている。[参][参]
またにんにくの、肺炎連鎖球菌などへのバイオフィルム破壊作用を調べた研究では、24時間でバイオフィルムを最大約85%分解し、バイオフィルム内の細菌活性を最大約81%減少させたという。[参]
ウコン(クルクミン)
ウコンの有効成分であるクルクミンは、優秀な抗菌剤であり、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤である。[参]
クルクミンはまた、バイオフィルムを構成する材料のひとつのDNAを減少させるなどして、バイオフィルムそのものを破壊することもできる。[参][参][参]
リンゴ酢
リンゴ酢もオレガノ同様、カンジダ症の治療によく利用されており、強壮剤としても知られている。
リンゴ酢の酢酸には病原菌を殺菌し、成熟したバイオフィルムを分解する力がある。[参]
緑膿菌および黄色ブドウ球菌の成熟バイオフィルムに対する効果を調べた実験では、0.5%濃度の酢酸が、成熟した緑膿菌のバイオフィルムを根絶し(内部の菌が全滅)、1%の酢酸が黄色ブドウ球菌の成熟バイオフィルムを根絶(同)したという。[参]
ちなみにお酢の酢酸濃度は3~5%である。
純リンゴ酢/オーガニック、無添加、360ml、790円前後NAC(N-アセチルシステイン)
NACは、優秀な抗菌・抗真菌・抗ウイルス剤である。バイオフィルムの形成を抑制し、破壊し、さらに内部の病原菌を殺菌する働きもある。[参]
N-アセチルシステイン(アミノ酸)/Detoxデトックスレギュレーター、NAC、セレン、モリブデン、60カプセル、650円前後酵素
消化酵素は、身体が食べ物を分解するのを手助けするものである。その分解力は、バイオフィルムのEPS(多糖類、たんぱく質、脂質、細胞外DNAなど)を不安定にし、溶解させるのに非常に有効だ。
以下のような酵素はバイオフィルム除去に役立つことが判明している。[参][参][参][参][参][参][参][参][参][参][参]
- アミラーゼ:でんぷん分解酵素
- セルラーゼ:セルロース分解酵素
- グリコシドヒドロラーゼ:グリコシド結合加水分解酵素
- ナットウキナーゼ:たんぱく質分解酵素
- ルンブロキナーゼ:たんぱく質分解酵素
- プロテアーゼ:たんぱく質分解酵素
- プラスミン:たんぱく質分解酵素
- ストレプトキナーゼ:たんぱく質を分解するたんぱく質
カンジダのバイオフィルム除去に関する注意点
慢性あるいは重度の感染症の場合、酵素を大量摂取するなどしてバイオフィルムを一気に分解しようとするのは危険である。バイオフィルム内の病原菌が体内に拡散し、免疫系を圧倒。敗血症や菌血症を引きおこす可能性があるからだ。場合によっては死にいたることもある。[参][参]
まずは食事療法によって感染レベルを十分に引き下げておく必要があるだろう。
抗菌剤の併用を検討する手もある。この場合、医師の協力が不可欠となる。
なお、バイオフィルムと病原菌を適切に処理したとしても、病原菌の死滅による毒素が腸管内に放出されることは避けられない。
毒素が腸管から血管内に吸収されると、ヘルクスハイマー反応(ダイオフ)と呼ばれる、さまざまな不快症状――発熱や下痢、頭痛、関節の痛み、発疹、アレルギー反応などが生じることがある。これは身体を衰弱させる。
ダイオフを回避するには、事前に対策を講じておく必要がある。
チャコールやクレイ(食用粘土)は、病原菌の死滅によって放出される毒素を吸着し、便として排泄するのに役立ってくれる。
参考 クレイ、チャコールFOODHACK