バイオフィルムとは何か? どう対処すればいいのか?

バイオフィルム

大腸に棲む微生物たちは、糞便中の55%を占め、宿主であるわれわれと密接な関わりを持って生活している。たとえば次のような働きが知られている。

  • 食べ物を発酵させ、栄養吸収を手助けする。[参]
  • 大腸を覆う細菌生成物によって、病原性微生物の定着を阻む。[参]
  • ヒトの免疫系を調節する。[参]

腸内の微生物が果たすこのような役割については徐々に明らかになってきているが、一方で彼らの住処であるバイオフィルムに関する研究はほとんど行なわれていないのが実情である。

バイオフィルムは腸管、鼻腔、口腔、皮膚など、体内のいたるところに存在し、とくに腸管の微生物は、腸壁を覆う粘液層や、糞便中の食物カスの表面にバイオフィルムとして存在する。[参]

ビフィズス菌や乳酸菌、大腸菌、連鎖球菌、真菌(カビ)、ブドウ球菌など、多様な細菌がバイオフィルムを形成し、われわれの健康に貢献することもあれば、健康を阻害することもある。たとえば以下は、バイオフィルム化や過増殖により病原性を強め、重篤な健康トラブルを引きおこすことのある微生物だ。

ブドウ球菌、緑膿菌、腸球菌、ピロリ菌、リステリア菌、炭疽菌、サルモネラ菌、チフス、大腸菌、カンジダ菌 [参][参][参][参][参][参][参]

これは、細菌性あるいは真菌性のバイオフィルムについて正しく理解し、それを除去する方法について学ぶための記事である。

バイオフィルムとは何か

バイオフィルムとは、細菌や真菌が生存のためにつくりだす防御膜のことである。

たとえば台所や浴室の排水溝などにできる、ぬめぬめとした物質。あれはカビのバイオフィルムだ。歯間にあるぬめり、あれも虫歯菌や真菌のバイオフィルムだ。

まずはバイオフィルムの形成過程や特徴、われわれ人間にとっての問題点について解説しよう。

ほとんどの細菌は単細胞としてでなく、バイオフィルム内にいる

細菌に対する一般的なイメージは、自由に浮遊し、毒素を放出、われわれに悪影響をもたらすというものだろう。ところが実は、ほとんどの細菌はバイオフィルムと呼ばれるコミュニティの中にいて、共同生活を送っている。

バイオフィルム内に暮らす細菌は1種類とはかぎらない。複数種の細菌や真菌が同居していることもある。バイオフィルムはつまり、微生物たちにとって、アパートのような存在なのだ。

このアパートを建築するに当たって、彼らはまず空き地を探す。都合のよい土地――ほかの微生物がいない粘膜や食物の残滓などを見つけたら、その表面にとりつき、カルシウム、マグネシウム、鉄といったミネラルを取り込み、みずから壁の主成分となる多糖類を産生し、外壁を完成させていくのである。

バイオフィルムは細菌や真菌にとって安息の地だ。ヒトの免疫系もほとんどの抗生物質もバイオフィルム内の微生物には手出しができない。物理的なバリアーによって阻まれているからである。[参][参]

葉山
葉山

この半世紀の抗生物質の濫用によって、病原菌に抗生物質耐性が生じていることがよく問題視される。一方でバイオフィルムは物理的あるいは化学的な抗生物質耐性をもともと持っているのである。

現代医療はバイオフィルムに対処できない

感染症に対する医療現場のアプローチは現在のところ、抗生物質の投与が中心。浮遊性の細菌あるいは真菌による急性感染症を対象としたものとなっている。バイオフィルムは想定外だ。

しかし大多数の病原菌はバイオフィルムに隠れている。このため治療効果は限定的なものとなってしまっている。そしてヒトの細菌感染の80%以上がバイオフィルムに関連している。[参]

細菌感染症や真菌感染症が、再発を繰りかえしやすいのはこのためである。

消化管はバイオフィルム形成の理想的環境

消化管は、バイオフィルムをつくるのにうってつけの環境だ。なにしろ栄養が次々に送りこまれてくるし、なんといっても土地が広大だ。

よく聞く喩えで「(腸の表面積は)テニスコート1面分」というのがあるが、これは大腸の話。小腸も合わせるとその表面積は20畳にもなる。

もちろんわれわれの腸壁にはもともと、バイオフィルムの違法建築を阻むための保護層がある。だが、腸粘膜にひどい炎症が起きるとそれが剥がれてしまい、細菌や真菌たちにバイオフィルムを構築するチャンスを与えてしまうのである。

バイオフィルムは多数の病気に関与している

多くの慢性病の背景にはバイオフィルムの存在があり、このことが症状の悪化あるいは再発に関連し、治療を困難にしている。現在、バイオフィルムとの関わりがわかっている(疑われている)疾患には以下のようなものがある。

  • 慢性の細菌感染症、真菌感染症 [参]
  • 慢性疲労症候群
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)[参][参][参]
  • 慢性副鼻腔炎 [参][参][参]
  • 咽頭炎(連鎖球菌性)[参]
  • 気管支炎 [参]
  • 逆流性食道炎 [参]
  • 全身性エリテマトーデス [参][参]
  • 多発性硬化症
  • ライム病 [参][参]

バイオフィルムへの対処法

抗生物質やステロイドといった医薬品は、バイオフィルムを伴う感染症には効果がない。いわゆる標準治療では何も解決できない。

必要なのはバイオフィルムを分解し、その中に潜む病原菌を殺し、それらが放出したゴミ――重金属や毒素、バイオフィルムの残滓などを手際よく取り除くことである。

さらに微生物感染によって傷ついた腸粘膜を修復することで、バイオフィルム除去に伴う一連のプロセスは完了する。

1.バイオフィルムの分解

まず最初に手をつけるべきなのは、バイオフィルムを分解するプロセスだ。

そのために有用なのは、以下のような酵素である。[参][参]

  • ナットウキナーゼ:納豆の粘りに含まれる、たんぱく質分解酵素
  • ルンブロキナーゼ:食用ミミズから抽出される、たんぱく質分解酵素
  • プロテアーゼ:たんぱく質分解酵素
  • プラスミン:たんぱく質分解酵素
  • ストレプトキナーゼ:溶血性連鎖球菌の一種が産生する酵素

これらのたんぱく質分解酵素は、バイオフィルムの成分の一部であるポリペプチド(アミノ酸化合物)やたんぱく質に作用する。多糖類を分解できるアミラーゼやセルラーゼ、ヘミセルラーゼといった消化酵素も有効である。

バイオフィルムを破壊する消化酵素ブレンドサプリメントなども市販されている。

また、N-アセチルシステイン(NAC)もバイオフィルムの治療と予防において、すばらしい選択肢である。NACにはすぐれた抗菌作用があり、バイオフィルム形成を阻害すると同時に、バイオフィルムを破壊、さらにバイオフィルム中の細菌を殺すこともできるからだ。[参]

NACは強い抗酸化物質であり、金属中毒の治療などにも利用される。

さらに次のような物質もバイオフィルムに対抗する武器となる。

  • コロイド銀:バイオフィルムを直接、弱毒化する [参]
  • ラウリン酸:バイオフィルムの発生を抑える [参]
ラウリン酸はココナッツオイルの約半分を占める成分だ。手軽に摂取できる。

2.病原菌の殺菌

バイオフィルムの構造体を不安定にしたら、内部に隠れている病原菌を殺菌するプロセスに即、着手する。

この段階では抗生物質も選択肢に加えることができる。ただし抗生物質の使用に当たっては、医療機関で検査を受けて、感染症を引きおこしている菌が何であるかを特定する必要があるだろう。

個人で対処する場合は、次のような抗菌・抗真菌特性を持つハーブやエッセンシャルオイルを利用することになる。

3.ゴミ(重金属、毒素、分解後のバイオフィルム)処理

バイオフィルムが不安定になり、内部の病原菌を殺菌したあとは、彼らが出したゴミ――ミネラルや重金属、毒素などの後始末をする必要がある。放置しておくと、身体がダメージを受けることになるからだ。

ミネラルや重金属の除去によく用いられるのは、キレート剤である。エデト酸(EDTA)は金属中毒の治療やデトックス、キレーションなどに使われているもので、バイオフィルムを破壊する効果もある。[参][参]

また、チャコール(竹炭や活性炭)ベントナイトクレイ(食用粘土)、キトサン(甲殻類由来の食物繊維)やペクチン(果物に含まれる水溶性食物繊維)などもバイオフィルム処理後のゴミを吸着し、排泄するのに役立つ。

4.傷んだ腸壁の修復

最後は消化管を再建するプロセスである。そのために有用なのが、プロバイオティクスプレバイオティクスだ。

プロバイオティクス、すなわち有用微生物たちは、われわれ人間にとって敵対的な微生物を減らし、友好的な微生物を増やすことで、腸内細菌のバランスを整えてくれる。さらに新たなバイオフィルムの形成を阻害する。[参][参]

このプロバイオティクスの働きを支えるのがプレバイオティクスだ。オリゴ糖などのプレバイオティクスはプロバイオティクスの餌として彼らの活動をバックアップする。

さいごに

バイオフィルムに起因する難治性感染症や慢性疾患に苦しむ患者がどのくらいいるのかはわからない。ともかく臨床の現場で1日も早く、バイオフィルムに対する専門的なアプローチがスタートすることを願うばかりである。

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