ひと括りに「カンジダ」と呼んでいるが、カンジダ属は自然界に広く分布しており、全部で200種以上も存在する。このうち、われわれヒトの病気の原因になるのは8種類ほどである。
まず、いちばん病原性が高く、カンジダ症(カンジダの感染症)の原因になりやすいのがコイツ。
- カンジダ・アルビカンス
普段は口腔、消化管、膣などの粘膜で静かに暮らしているのだが、宿主(人間)の免疫力が低下するなどして、異常に増殖することで感染症を引きおこす。
いちばん上にある写真は酵母型から菌糸型にメタモルフォーゼ(変身)を果たし、凶悪化したアルビカンス。カンジダは本来は酵母(真菌類だが、カビではない)である。つまり卵形の単細胞生物なのだが、カビと同じ菌糸型(複数の細胞が菌糸状に連なる)になることで毒性をぐっと強めるのである。
消化管が感染すれば「腸カンジダ」、女性の陰部が感染すれば「膣カンジダ」といった具合。温度と湿度の条件が整えば皮膚でも繁殖する。「皮膚カンジダ」と呼ばれる。とくにステロイドを使用している人は皮膚カンジダになりやすいことが知られている。
アルビカンス以外にカンジダ症の原因となりやすいのは、コイツらだ。
- カンジダ・グラブラータ
- カンジダ・パラプシローシス
- カンジダ・トロピカリス
- カンジダ・クルセイ
こうしたカンジダ症は全真菌感染の死亡例の30%ほどを占めており、死亡していない患者を含めると30%をはるかに上回る感染者がいると予想されている。[参]
【補足】カンジダのなかには、われわれの食生活を豊かにする手伝いをしている連中もいる。
- カンジダ・エチェルシー:味噌や醤油の発酵を手伝う
- カンジダ・バーサチルス:味噌や醤油の発酵を手伝う
- カンジダ・ステラータ:ワインの醸造を手伝う
カンジダ症の原因
カンジダに感染を引きおこす原因は、次のようなものだ。
- 抗生物質の使用
- ステロイドの使用
- 免疫抑制剤の使用
- 静脈カテーテルの使用
- 経静脈栄養(点滴など)
- 抗がん剤の使用
カンジダはバイオフィルム(細菌集団)を形成し、身を守る
水が存在する場所では、細菌や真菌はコロニーを形成する。そしてコロニーはぬめりのある保護層で守られている。そのほうが生存に有利だからだ。これをバイオフィルムという。
キッチンのシンクや風呂場の排水溝などのぬめり、あれもバイオフィルムである。あなたの口の中にある歯垢、それもバイオフィルムだ。
バイオフィルムには粘着性があり、容易には流れ落ちないようになっている。抗菌剤や抗真菌剤に対しても、保護膜がバリアーの働きを果たすため、きわめて高い耐性を示す。
カンジダはバイオフィルムを形成する真菌として知られている。われわれの体内にいるカンジダが増殖し、バイオフィルムに隠れはじめると、カンジダ症は重症化、難治化、そして慢性化し、一筋縄ではいかなくなる。
バイオフィルムを伴うカンジダ症は治療が困難
バイオフィルムができると、抗生物質はもちろん、抗真菌薬も効かなくなってしまう。われわれ自身の免疫細胞も中のヤツらには手が出せない。
もちろん、皮膚や口の中など感染部位が手の届く場所ならば、物理的にカンジダのバイオフィルムを排除(分解、破壊、除去)することもできるだろう。その後、外用の抗菌剤で退治すればよい。
ラシミールは、白癬菌(真菌)治療に用いられる有名な外用抗菌剤(市販薬)。水虫用だが、カンジダにも効果がある。有効成分の塩酸テルビナフィンが角質に浸透し、真菌を殺菌する。 | アスタットは、カンジダに対して高い抗真菌活性を発揮する外用抗菌剤。処方薬だから、市販薬よりずっと強力。有効率は、白癬菌78.1~92.8%、カンジダ94.7~100%と高い。 |
しかし鼻腔内や肺、消化管などが感染した場合はやっかいだ。
抗真菌薬の服用でバイオフィルム外の無防備な連中を全滅させても、薬をやめたら中のヤツらが這いだしてきてふたたび繁殖してしまう。あるいは食事制限(厳しい糖質制限)でカンジダの餌(糖質)を断ち、兵糧攻めにして繁殖を抑えても、たまに甘いものを食べただけで元の木阿弥である。
抗真菌薬が効かない理由:すべてのカンジダに有効な薬が存在しない
カンジダ症が完治しにくい理由は、バイオフィルムのほかにもある。複数種のカンジダに効果のある抗真菌薬が存在しないのだ。
カンジダ症に処方される抗真菌剤は一般に、第1選択薬が「フルコナゾール」、第2選択薬が「イトラコナゾール」、最後が「ボリコナゾール」とされる。
だが、たとえば第1選択薬のフルコナゾールはアルビカンスにはよく効くものの、グラブラータやクルセイにはほとんど効かない。だからアルビカンスを殺しても、今度はグラブラータやクルセイが繁殖してくるということが起きるのである。
実際、最近ではアルビカンス以外が原因のカンジダ症が急増している。
フルコナゾールのジェネリック医薬品、オゾール。30日間使用。服用開始直後より全身の倦怠感、湿疹など、はっきりしたダイオフ症状が出現。その後、回復してきたように感じたが、しばらくすると元に戻ってしまった。 | イトラコナゾールのジェネリック医薬品、イトラ。50日間使用。フルコナゾールのときと同じダイオフ症状が出現。20日後には徐々に回復基調に乗る。が、やがて下り坂へ。50日後には、症状は完全に元に戻っていた。 |
耐性菌の出現も問題となっている。著効を示したはずのフルコナゾールが効かないアルビカンスも登場しているのだ。[参][参]
カンジダ症に有効な、実用的な治療法とは?
抗真菌薬も食事制限もまったく役に立たないわけではない。感染の初期段階や、バイオフィルムを伴わない感染であれば、完治する見込みはあるかもしれない。
が、多くのカンジダ症においては根本的な解決にならない可能性が高い。
バイオフィルムを伴うカンジダ症に対抗する手段がないわけではない。
選択的にしか働いてくれない医薬品でなく、すべてのカンジダに満遍なく作用する天然抗菌剤を上手に使うのだ。彼らが隠れ家に潜んでいるなら、まずは自然界に存在するバイオフィルム破壊物質でその壁を叩き壊してやればいいのである。
息子が1年半以上気づかずに放置してました。体重が20キロも減りどうして良いか分からずにいたところこの記事をみてまだ助かるかもしれないという希望がでてきました。
病院の食事制限では克服できず、どうしたら良いのか分からずでした。
遅粘型アレルギーがでているのでたぶん酷い状態だと思います。
食事も何がいけないのか?良いのか?を模索中です。
お聞きしたいのですが、醤油、味噌など調味料も使っていいのかわかりません。教えて頂けますか?
葉山です。こんばんは。当方、医療従事者ではありませんので、病気の治療に関するアドバイスはできません。以下あくまで私見、経験則であることをお断りしたうえでのお返事ですが、その方の状況によるかと思います。
カンジダ症ではほかの酵母への交叉反応を生ずることがありますので、一般に発酵食品は避けたほうが無難とされます。が、醤油や味噌といった発酵食品はわたしたち日本人の身体と相性がいいため、ほとんどのケースにおいて避ける必要はありません。
しかしながら症状があまりにひどい場合、話は別です。私の知るケースでも、醤油や味噌、日本酒やお酢、ぬか漬けにも身体が反応してしまう方がおられました。
それぞれの食品を食してみて自覚症状の有無を観察するほかないように思います。なお同じ食品であっても、製品(製造工程や原材料)によって反応は異なるようです。たとえば豆味噌(八丁味噌)はダメでも米味噌は問題ないとか、安価な穀物酢はNGだけれど、有機リンゴ酢はOKといったふうに。
こんなお話で参考になりましたらうれしいかぎりです。どうかお大事になさってくださいね。
顕微鏡で見ると髪の毛のようなのが玉を吹いたガーゼに付いている。黒いものや赤いもの。黄色のもの。白いカスみたいなものの中にも黒い毛がある。これは何ですか?がんじだですか?
玉を吹いたガーゼとはなんでしょうか。いずれにしろ私は顕微鏡でカンジダを観察したことがありませんもので、検索エンジンで画像検索するか、研究機関にお聞きになってみてください。
はじめまして。腸カンジタで苦しんでいるものです。この治療で有名な病院はしりませんか?
心当たりがないです。お役に立てず申し訳ありません。。。