アシドフィルス菌の効果〜研究で証明された20の健康機能

ラクトバチルス・アシドフィルス菌(以下、アシドフィルス菌)は、非常にポピュラーな乳酸菌だ。乳酸菌や整腸剤などにもよく配合されている。

数多くの健康機能を持つことがわかっているからだ。

たとえばアレルギーをやわらげ、免疫力を向上させ、疲労感を減らし、アンチエイジングにも役立ってくれる。

それではさっそく、アシドフィルス菌の健康機能をご紹介しよう。

アシドフィルス菌とは何か?

アシドフィルス菌はグラム陽性の乳酸菌である。

風味がよく、すぐれた健康機能を持つことから、最近では市販のプロバイオティクス(乳酸菌サプリやヨーグルトなど)に広く使われている。[参]

アシドフィルス菌の健康への効果

インフルエンザやガン、糖尿病、心疾患、アレルギーのほか、老化や疲労軽減など、アシドフィルス菌には幅広い効果がある。

まずは手始めに、消化管への効果から解説したい。

葉山
葉山

なにしろアシドフィルス菌は腸内常在菌の一種なのだ。

1.消化管(胃腸)への効果

腸内細菌叢を改善する

ラットの実験で、アシドフィルス菌はラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属(どちらも善玉菌)の数を増加させた。[参]

また、アシドフィルス菌入りのヨーグルトを肥満マウスに投与したところ、腸内細菌叢が整い、腸のビフィズス菌が増加したという。[参]

もちろんヒトを対象にした研究でも、ラット同様に善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことがわかっている。[参]

ちなみにこの研究で、アシドフィルス菌が増やしたという善玉菌は、

  • ラクトバチルス属
  • ビフィドバクテリウム属
  • コリンゼラ属
  • ユーバクテリウム属

減らした悪玉菌は、

  • ディアリスター属

この実験では、被験者らはアフィリエイトといっしょにオリゴ糖を摂取していた。

別の実験でも、アシドフィルス菌はラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属を増やし、酢酸や酪酸などの腸内レベルを増加させ、反対にアンモニアレベルを低下させることがわかっている。[参]

葉山
葉山

酢酸や酪酸は腸内有益菌に活を入れたり、腸壁に適度な刺激を与えて、排泄を促すなど、腸の健康維持に役立つものだ。

消化管の炎症を抑制する

まずは動物実験の結果から。

アシドフィルス菌は、大腸炎によるマウスの体重減少を防ぎ、腸の末端部(直腸やS字結腸)で、宿主にとって有益なラクトバチルス属とビフィドバクテリウム属を増加させた。[参]

さらにラットの壊死性腸炎(NEC)の発症を予防する効果があることや、化学療法によって引き起こされた、マウスの腸管粘膜炎の炎症を抑制し、機能を改善させたそうだ。[参]

ヒトに対する研究でも、アシドフィルス菌が腸の炎症に効果的に働くことがわかっている。

アシドフィルス菌は、腸管上皮細胞の炎症に対抗することができるのだ。

アシドフィルス菌を利用した治療によって、腸管上皮細胞での酪酸の取り込みが優位に増加したという。酪酸塩には、粘膜の炎症を改善し、塩分の吸収を促進するといった大切な働きがある。[参]

さらに腸の上皮細胞の炎症を減らし、炎症性サイトカインの放出を抑制したという。[参][参]

大腸菌による感染を改善する

大腸菌感染への効果に関しては、現状ではマウスの研究しかない。

そのため、われわれ人間への効果については可能性レベルとなるが、アシドフィルス菌は、マウスの大腸菌感染を軽減させている。[参]

さらに強烈な下痢や大腸炎を引き起こすことで知られる細菌「クロストリジウム・ディフィシル」への優位な対抗力があり、サルモネラ感染に対抗するツールとしても使える可能性が示唆されている。[参][参]

下痢を改善する

アシドフィルス菌は、下痢にも効果がある。

マウスの下痢を改善。ヒトを対象にした試験でも、慢性下痢患者の症状を有意に改善し、入院した下痢患者(子ども)の下痢の期間を短縮し、ロタウイルスによる下痢を改善したそうだ。[参][参][参][参][参][参]

ただし、いくつかの試験において、子どもの急性下痢の予防にははっきりした効果がないこともわかっている。[参]

潰瘍を改善する

アシドフィルス菌は、ラットの胃潰瘍の治癒を促進した。[参]

このことは、われわれヒトの潰瘍を改善してくれる可能性を示している。

抗生物質の副作用(腸内細菌叢かく乱)を軽減

アシドフィルス菌は、抗生物質の副作用で生じる酵母重感染の有意な減少と関連していた。[参]

過敏性腸症候群(IBS)の症状軽減

アシドフィルス菌は、過敏性腸症候群(IBS)の一般的な症状である腹痛や腹部の不快感を低減する。[参][参]

2.病気や不定愁訴への効果

消化管への効果は以上だ。

ついで病気や慢性的な不調に対する効果を解説していこう。

心血管疾患の予防する

アシドフィルス菌はマウスのコレステロールを低下させ、アテロームの発生を阻害したという。[参]

別の研究でも、酸化ストレスと炎症反応を軽減することで、マウスのアテローム性動脈硬化症の発症を軽減させた。[参]

さらにアシドフィルス菌は、西洋食を与えられたマウスのコレステロール吸収を抑制し、アテローム性動脈硬化症の発症を抑制したという。[参]

これらは、ヒトの心血管疾患を予防する可能性を示しているといえよう。

高コレステロール血症を改善する

高脂肪食を与えたマウスにアシドフィルス菌を与えると、コレステロールは減少したという。[参]

ラットの研究でも、アシドフィルス菌が血中総コレステロール、LDLコレステロール、TAG、全肝臓コレステロール、肝臓TAGを低下させることがわかっている。[参][参]

われわれ人間が毎夕食後、アシドフィルス菌を含むヨーグルトを毎日摂取すると、同様にコレステロール値が大きく減少するという。[参]

糖尿病を改善する

動物実験によると、アシドフィルス菌はグルコース恒常性を改善するかもしれないという。

男性45人(2型糖尿病、耐糖能異常、健康体)を対象にした比較試験では、リポ多糖の注射によって強制的にインスリン感受性を引きさげ、炎症刺激を与えようとしたが、アシドフィルス菌を服用していた一群では、インスリン感受性の低下は見られなかったという。[参]

ただしアシドフィルス菌服用群と未服用群において、炎症反応における差異はなかった。

関節炎を緩和する

アシドフィルス菌は、関節炎のラットの症状を緩和した。さらに関節炎からくる臓器障害をやわらげたそうだ。その効果は、インドメタシン(抗炎症薬)に拮抗したという。[参][参]

泌尿器感染を予防する

ヒトの臨床試験において、アシドフィルス菌をたっぷり含んだヨーグルトを毎日食べることで、再発性の細菌性膣炎やカンジダ性膣炎を予防する可能性があると結論づけられている。[参][参]

免疫力向上、抗細菌、高ウイルス作用

健康なマウスにおいて、アシドフィルス菌は免疫力を強化することがわかっている。[参]

さらにアシドフィルス菌には、抗細菌、高ウイルス作用があることもわかっている。

マウスの実験では次のようなことが判明している。[参][参][参][参]

  • 細菌性の大腸炎を予防する
  • 病原性のグラム陽性菌および陰性菌の増殖を阻害する
  • レンサ球菌を減少させる
  • インフルエンザウイルス感染を防御する

アレルギー、アトピー性皮膚炎を改善

アシドフィルス菌は、スギ花粉症やアレルギー性鼻炎の症状を軽くすることがわかっている。[参][参][参]

マウスの実験でも、アシドフィルス菌はIgE(即時型アレルギー)抗体産生を抑制している。過敏症やアレルギー性の接触性皮膚炎、鼻炎を抑え込む力があるとわかっているという。[参][参][参][参]

アトピー性皮膚炎に対する効果では、Th1細胞を活性化させることで、Th2優位で起きる炎症を抑制することが確認されており、長期間の摂取によってアトピーの子どものTh1/Th2バランスを改善し、症状を軽くしたという。[参][参]

成人のアトピー患者に対する臨床試験でも、湿疹の面積を減少させて、症状を軽減したそうだ。アトピー特有の引っかき行動の抑制にもつながったという。[参][参][参]

ピロリ菌に対抗する

アシドフィルス菌は、ピロリ菌による腸炎を改善するだけでなく、抗生物質治療によるピロリ菌の生存率を低下させ根絶率を高めることがわかっている。[参][参]

貧血を改善する

アシドフィルス菌を摂取することで、貧血状態においたラットの鉄分の利用能が増すという。[参]

未就学児童に対する臨床試験では、アシドフィルス菌を摂取した子どもたちはそうでない子どもより赤血球の濃度が高くなり、貧血の有意な減少が見られたという。[参][参]

ちなみにインドの若い女性たちの鉄欠乏症は、腸内の乳酸桿菌の不足に関連していたそうだ。つまり腸内細菌は鉄分の吸収に関与している可能性があるということだ。[参]

痛みを軽減する

アシドフィルス菌の経口摂取には、モルヒネ様の効果があり、鎮痛作用があるという。[参]

慢性疲労を改善する

アシドフィルス菌は、スポーツ選手の運動後の免疫障害を回復させ、慢性疲労とストレスを軽くしたという。[参][参]

老化に対抗する

高齢になると、ヒトの腸内のビフィズス菌が減少するものだが、アシドフィルス菌を摂取することで、ビフィズス菌のレベルが上昇する。結果、腸内環境も改善する。[参]

動物実験でも、マウスの加齢による免疫機能低下を回復させている。[参]

がんを改善する

アシドフィルス菌は、ヒトの胃がんや結腸がん、乳がんのがん細胞にとっては、毒性を持っているという。[参][参]

マウスやラットを使った研究では、アシドフィルス菌を投与することで、以下のような結果を得ている。[参][参][参]

  • 結腸の腫瘍発生率や腫瘍サイズが減少
  • 乳房腫瘍の腫瘍増殖が約50%も減少し、生存率が向上
  • 結腸がんの重症度低下

ヒトに対する研究が待たれるところである。

アシドフィルス菌の安全性

アシドフィルス菌の摂取には、とくに危険はない。

ただし免疫不全や臓器不全、腸管バリア機能のいちじるしい低下などがある場合、感染症につながるリスクがある。摂取は避けるのが望ましい。[参]

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