ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム属の微生物の総称)は、母乳で育つ赤ん坊の腸内細菌の8割以上を占める微生物。多くの種が見つかっているが、ヒトの腸内にいるのはこれらの種とされている。[参]
このうち母乳で育つ乳児の腸内に多く棲息するのは、このとおり。[参][参]
- 1位:ブレーベ種
- 2位:ビフィダム種
- 3位:ロンガム種
しかし成人すると、腸内のビフィズス菌の割合は低下し、2~14%にまで減少する。ビフィズス菌の構成も変化し、とくにビフィダム種は顕著に割合を減らし、代わってアドルスセンティス種などが台頭。その後は比較的安定した状態を維持していくが、老化とともに再び減少していく。[参]
アレルギーや糖尿病や肥満などの病気は、人生のそれぞれの時期におけるビフィズス菌の減少に関連している。[参]
このようにビフィズス菌は、われわれの腸内細菌にとって、非常に重要な微生物である。このプロバイオティクスを摂取することで、下痢やIBS(過敏性腸症候群)、感染症の予防と改善など、健康上の大きなメリットを与えてくれる。[参]
ここでは、健康な母乳育成乳児の腸内優性種であるビフィダム種に着目して、その健康機能を解説したい。ビフィダム種はビフィズス菌のなかでもとくに細菌学者の関心を集めており、重要な健康上のメリットが証明されているからだ。[参][参][参][参]
ビフィズス菌の健康効果
1.ビフィズス菌は胃腸を癒やす
消化器系疾患を改善する
ビフィダム種は、原因不明の胃の痛み、もたれ、食後の膨満感や不快感(これらをまとめて機能性胃腸障害という)の症状を改善させる。下痢および便秘も有意に改善した。さらに怒りや敵意といったメンタル症状さえも改善した。[参]
プロバイオティクスの摂取は、胃や下腹部にトラブルを抱えている人びとの症状を有意に減少させた。[参]
また、ラットの急性胃損傷を緩和させた。[参]
腸内細菌のバランスを変化、改善する
ビフィダム種の摂取によって、プレボテラ属を減少させ、ルミノコッカス属などが増加した。[参]
別の研究では、腸内有益菌(ラクトバチルス)の量を増やし、非友好的な腸内細菌である大腸菌やエンテロバクター属を減らした。これにより、マウスの腸内の細菌叢を改善した。[参][参][参][参]
潰瘍性大腸炎やクローン病の改善に役立つ可能性
ビフィダム種は、腸壁の肥厚および炎症性細胞の浸潤など、マウスの炎症性腸疾患(一般には潰瘍性大腸炎やクローン病をいう)の症状を減少させ、炎症性サイトカイン産生を減少させた。[参]
炎症性サイトカインというのは、炎症を強める働きを持つたんぱく質で、病気の悪化原因だ。
大腸炎のマウスで抗炎症効果があり、ラットの壊死性腸炎を予防した。[参][参][参][参]
過敏性腸症候群(IBS)を改善する
過敏性腸症候群(IBS)の患者の症状を改善し、QOL(生活の質)を改善した。[参]
またIBS患者の急性の消化トラブル、腹部膨満感や腹痛、不快感をいちじるしく改善した。[参]
2.ビフィズス菌とピロリ菌
ビフィダム種は、ヘリコパクター・ピロリ菌の感染患者の症状を改善した。[参]
さらにピロリ菌が引き起こす胃へのダメージをやわらげ、マウスにおいてはピロリ菌の病原性を弱めた。[参]
3.ビフィズス菌は老化を遅らせる
老化は、大腸の有益なビフィズス菌の減少と免疫障害に関連している。
老いたマウスを使った実験では、ビフィダム種によって、老化が遅延することがわかった。胸腺と脾臓の抗酸化活性が増強し、遺伝子発現が変化。免疫機能が改善したのだ。[参]
4.ビフィズス菌はアレルギーを抑制する
ピフィダム種のビフィズス菌を経口摂取することで、有意にアレルギー性鼻炎鼻の鼻症状が緩和した。[参]
長期的な経口摂取によって、モルモットの花粉症(スギ)を抑制し、さらにアレルギーマウスにおける気道過敏性を有意に減らした。肺の炎症を改善し、免疫応答(Th2)も減らした。[参][参][参]
5.ビフィズス菌は湿疹を改善する
ビフィズス菌は、乳児の湿疹の予防と治療に効果がある。[参]
6.ビフィズス菌は肌の美白成分になる
ビフィダム種は、細胞内のメラニンの量を減らし、マウスにおいては抗酸化特性をあらわした。種々の色素沈着トラブルを改善するため、美白成分として理由できる可能性がある。[参]
7.ビフィズス菌はストレスを軽減する
心理的なストレスは胃腸に不快感を引きおこすことが少なくない。
胃腸の不快感を減らすことで、ストレスそのものを軽減できるかどうかを調べた研究では、ビフィズス菌の摂取によって、胃腸の障害を減らすと同時に、被験者のストレスも軽減させた。[参]
8.ビフィズス菌はコレステロールを低下させる
ラボでの実験において、ビフィダム種はコレステロール値を低下させた。[参]
9.ビフィズス菌は糖尿病に役立つ可能性がある
糖尿病のラットにおいて、空腹時血糖、ヘモグロビンA1c、総コレステロール、トリグリセリド、インスリンなどを低下させた。[参]
ビフィダム種はさらに酸化ストレスを改善した。糖尿病ラットの膵臓の抗酸化指数を正常値へ引きあげ、高血糖症や高脂血症を改善。酸化ストレスを減らした。[参]
別の研究でも、血糖を安定化させ、マウスの代謝活性を改善することができた。[参]
10.ビフィズス菌はがんと戦うかもしれない
ビフィダム種は実験室において、結腸と直腸のがん細胞の増殖を阻害した。[参]
ビフィズス菌摂取の安全性
ビフィズス菌(ビフィダム種)には危険性はないとみられている。ただし、免疫不全や臓器不全、あるいは腸の機能不全の場合、プロバイオティクス摂取は避けたほうが無難だ。感染症を引きおこす可能性がないともいえない。