都会じゃ虫なんていないよ——そう思っていませんか?
そんなことはありません。公園の木の根元、河川敷の草むら、神社の境内……。よく目を凝らせば、都会にだってたくさんの生きものが暮らしています。車で30分も走れば、里山はまだあちこちに残っています。
昆虫採集は、特別な場所へ行かなくてもできます。特別な知識がなくてもできます。必要なのは、虫取り網と虫かごとと、ちょっとした好奇心だけです。
はやま
どこへ行く? 採集地の見つけ方
まず自宅でロケハンしましょう。Googleマップを開いて、近くに緑の多い場所がないか探してみてください。
都市部でも狙い目の場所
- 森林公園・緑地公園——植物が多ければ、虫も多い。
- 植物園——意外な穴場。東京なら神代植物園(調布)は昆虫の宝庫として知られています。
- 河川敷——草が生い茂っているエリアを探しましょう。荒川・多摩川・江戸川などの河川敷は都心からのアクセスも良好。
- 神社・お寺の境内——古い木が多く、カブトムシやクワガタが出ることも。
少し足を伸ばすなら
車や電車で30〜60分も行けば、里山がぐっと身近になります。東京近郊なら八王子・奥多摩方面、埼玉・千葉方面の田んぼや雑木林エリアがおすすめです。
里山とは、人の暮らしと自然がほどよく混ざり合った場所のこと。田んぼ、雑木林、小川、草地——そういった環境が組み合わさった里山は、昆虫の種類も数も、都市公園とはケタ違いです。
はやま
服装はどうする?
虫取りの服装で大切なのは「肌を出さないこと」。夏でも長袖・長ズボンが基本です。
- 帽子——日差しと蜂対策に。白や明るい色がベター(黒は蜂を刺激しやすい)。
- 長袖・長ズボン——薄手でOK。蚊や毛虫から肌を守ります。
- 運動靴またはトレッキングシューズ——草むらや土の上を歩くので、サンダルは厳禁。
- 虫除けスプレー——汗で流れやすいので、1時間おきに塗り直しを。服の上にも吹きかけると効果的です。
虫の見つけ方のコツ
「虫がいない」と感じるのは、たいてい探し方が違うだけです。
時間帯を選ぶ
カブトムシやクワガタは夜行性なので、早朝か夜が狙い目。ほかの虫は、日が高くなる前の涼しい午前中のほうが活発に動いています。真夏の昼間は、虫も人間も木陰で休んでいます(笑)。
樹液を探す
カブトムシ・クワガタ・カナブンはクヌギやコナラの樹液が大好物。幹に樹液が滲み出ているところを見つけたら、そこが彼らの特等席。
葉の裏を見る
虫は葉の裏に隠れていることが多いです。ひっくり返してみると、思わぬ発見があります。
音を聞く
セミ、コオロギ、スズムシ——。声のする方向に近づくと見つかることがあります。急に動くと逃げるので、そっと、そっと。
木を揺らしてみる
ノコギリクワガタは驚くと死んだフリをして落ちてきます。木をそっと揺らして、下に白いシートを広げておくのが上級者テクニック。
はやま
虫の捕まえ方のコツ
網を振るときは、前から後ろへ「すくう」ように動かすのがコツです。真正面から勢いよく振ると、風で虫が逃げてしまいます。
捕まえたら、網の口をすぐにふさいで。虫かごに移すときは、網の先端をかごの口に当てて、虫が自分で入るのを待ちましょう。焦って手で押し込もうとすると、逃げられます。
カブトムシやクワガタを手で捕まえるときは、背中をしっかり上から押さえるように持つと安定します。クワガタは挟んでくるので、後ろから親指と人差し指で胸の部分を持つのが安全です。
スズメバチには要注意
夏の野外で一番気をつけたいのがスズメバチです。
- 黒い服は避ける(攻撃を受けやすくなる)
- 香水や整髪料はNG
- 巣を見つけたら、静かにその場を離れる
- スズメバチが近づいてきたら、手で払わず、ゆっくりしゃがんで離れる
万が一刺されたら、すぐに流水で洗い流し、医療機関へ。アナフィラキシーショックの可能性があるので、過去に刺されたことがある方はとくに注意が必要です。
出会える虫たち——日曜ファーブルのミニ図鑑
都市近郊で出会える代表的な虫たちをご紹介します。
「これ、なんて虫?」と子どもに聞かれたとき、サッと答えられるように。都市近郊で出会える虫たちを集めました。スマホで見ながら使ってください。
🪲 カブトムシ・クワガタの仲間
カブトムシ
甲虫の王。2本の角をもつ黒光りが雄、角がなく毛で覆われているのが雌。クヌギの樹液が好物。幼虫は腐葉土に潜む。
ノコギリクワガタ
2〜8cm。均一なノコギリ状の顎が特徴で男の子に大人気。木を蹴ると驚いて死んだフリして落ちてくる小心者(笑)。
ヒラタクワガタ
扁平で短足、最大11cm。力持ちだが動きはのんびり。クワガタ界のブルドーザー。湿気好きで河川敷近くの林にも。
✨ カミキリムシ・コガネムシの仲間
ゴマダラカミキリ
2.5〜3.5cm。黒いまだら模様。どんな木でも食べるため最もポピュラーなカミキリムシ。ウルトラマンの怪獣ゼットンのモデルとも。
ルリボシカミキリ
鮮やかなブルーの体色が目を引く。死ぬと赤褐色に変わるはかなさがまたいい。広葉樹林に棲息し、成虫は6〜9月に出現。
カナブン
金属光沢のあるコガネムシ。関西では「ブイブイ」。灯りに向かって直進。窓ガラスに激突して気絶している個体をよく見かける。
マメコガネ
8〜15mm。小型のコガネムシ。農作物を食い荒らすため害虫扱いだが、コガネムシが夜行性なのにコイツは日中元気に活動する。
カミキリムシ
全世界に2万種以上。日本だけで千種近く。害虫。でもマニアに人気。捕まえると、キイキイ鳴く。顎の力が強く、噛みつかれることも。
タマムシ
虹のような縦じまが美しい。この派手な色は捕食者への警戒色。死んでも色が変わらないため、昔から装飾品として使われてきた。
🦗 バッタ・コオロギ・カマキリの仲間
マダラバッタ
28~35mm。トノサマバッタにも褐色の個体がいる。生息域も同じ。まぎらわしい。仮面ライダーのモデルはトノサマバッタ。
トノサマバッタ
35~65mmと大きく、大名バッタとも。原っぱや河川敷に多い。稲科の植物を食す。虫の死骸も食べる。仲間を食べるのを何度か見た。
ショウリョウバッタ
最大級のバッタで雌は9cmにもなる。草むらに擬態した緑色が多いが、茶色もいる。都会の公園にもよく出没。食べるとエビ風味(らしい)。
クサキリ
体長40~55mm。湿地や草原、市街地にも棲息。8~10月に姿をあらわす。ジー、という鳴き声が聞こえたら近くにいる。雑食。虫も喰らう。
カマキリ
巨大な鎌を持つ昆虫界の狩人。雌が交尾中の雄を食べることで有名。翅はもっぱら威嚇用。飛ぶのは苦手。カマキリに倣った武術、蟷螂拳で有名。
コオロギ
体長10〜40mm。コロコロと鳴く秋の使者。頭と尻に触角がある。基本は跳ねて移動。たまに飛ぶ個体がいて度肝を抜かれる。
🦋 チョウ・テントウムシの仲間
ナミアゲハ
民家のそばをひらひら舞う、日本人になじみ深いアゲハチョウ。3〜10月に見られる。翅の模様は鳥を怖がらせるための目玉模様とも。
アオスジアゲハ
パステルカラーのブルーが美しい。都市部でもよく見かける。飛ぶのがうまく旋回能力が高いため、網で捕まえるのが難しい。
モンシロチョウ
黄色っぽいのが雄。数匹かたまって飛んでいるのは、一匹の雌をめぐる雄たちの攻防。幼虫の半数は蜂や蝿に寄生されている。怖い。
カラスアゲハ
日本全土に分布。生体は4~9月。ほかのアゲハより敏捷性に劣るが、陰気な外見のせいか子どもに不人気。だからのんびり飛んでいるのか。
ナナホシテントウ
赤い翅に7つの黒い紋。実は毒を持つ。派手な色は天敵への警告。触ると死んだフリ。害虫のアブラムシを食べてくれる。農家に愛される。
ナミテントウ
テントウムシといえばこれ。色や斑点模様はさまざま。斑点のないのもいれば、19個というのも。アブラムシが好物。幼虫時代は共食いする。
🪰 トンボ・セミの仲間
オニヤンマ
日本最大のトンボで最大11cm。肉食でスズメバチも捕食。清浄な小川を好む。紐に小石を結んで回すと引き寄せられる。昔ながらの捕獲法。
アカトンボ(アキアカネ)
赤いトンボの総称だが主にアキアカネを指す。秋空を飛ぶ大群は日本の風物詩。童謡「赤とんぼ」のモデル。幼虫(ヤゴ)は水棲。
イトトンボ
水辺周辺をふわふわ飛ぶ。わっか状につながって飛ぶ姿をよく見る。それがハート型に見えるのが面白い。赤や黄色、青などの種がいる。
シオカラトンボ
田んぼや湿地にいる中型トンボ。ヤゴというと通常、この幼虫。ホバリングしながら水面に腹部先端を打ちつける仕草をよく見る。あれは産卵。
アブラゼミ
ジリジリという鳴き声が、油を熱した鍋の音に似るからこの名がついた。東京都心で最も多いセミ。夜中にも鳴くことがある。
ヒグラシ
透き通った翅を持ち、朝夕にカナカナと美しく鳴く。山間部に多い森林性のセミ。秋の季語だが、実は梅雨のころから鳴きはじめる。
クマゼミ
6~7cm。大型のセミ。ジー、シャンシャンシャン、とうるさい。午前中に鳴き、午後はアブラゼミにゆずる、という鳴き分けが面白い。
💧 水辺の虫・その他
ゲンゴロウ
水田や池、渓流などに棲息する。流線型の体系。水かき用の後脚。気泡を水中に持ちこみ呼吸する。餌は小魚。農薬や水質汚染で激減。
タガメ
最大6cmの水棲生物。魚・カエル・カメ、ネズミまで捕食。消化液でを注入し、溶かして食べる。子ども大人気だが、絶滅危惧種。
アメンボ
水上生活者。細毛で覆われた脚が表面張力を利用し、水面をすべるように移動する。見ていて小気味よい。実は肉食。
ハサミムシ
クワガタに似ているが、ハサミがあるのはお尻。虫を捕食し、天敵に反撃し、雌をめぐって同士討ちする。なかなかワイルドな生きもの。
カメムシ
別名、屁こき虫。敵に襲われると、強烈な悪臭を発する。臭いは自分自身ににとっても有害。密閉瓶に入れておくと死ぬ。アフリカで食用。
🌟 夏の夜の特別体験——セミの羽化
夏の夜、雑木林で地面から這い出してくるセミの幼虫を見つけたら、そっと持ち帰って網戸にくっつけておいてみてください。羽化の過程がつぶさに観察できます。殻から抜け出し、やわらかな羽根に体液を送り込みながらゆっくりそれを伸ばしていく姿は、神秘的のひとことです。子どもも大人も、目が離せなくなります。
はやま
自由研究にしてしまおう
せっかく昆虫採集をするなら、夏休みの自由研究に仕立ててしまいましょう。難しく考えなくて大丈夫。記録するだけでりっぱな研究になります。
~昆虫採集日記の例~

昆虫採集日記のつけ方
捕まえるたびに、次の項目をメモしておきましょう。
- 日付・時間・天気
- 場所(公園名、木の種類など)
- 虫の名前・大きさ・特徴
- どこにいたか(木の幹、葉の裏、草むらなど)
- 写真(スマホでOK)
これをまとめると「○○公園の昆虫マップ」や「夏の昆虫カレンダー」といったテーマに発展させることができます。
テーマの例
- 「うちの近所にはどんな虫がいる? 都会の昆虫探訪記」
- 「樹液に集まる虫たちの観察日記」
- 「同じ公園で、時間帯によって出会う虫は変わるか?」
はやま
自由研究は「調べる」より「体験する」方が絶対におもしろくなります。図書館で調べるだけの研究より、自分の足で歩いて見つけた記録の方が、読む人の心にも届く。それは大人の文章でも同じです。
虫取り網を一本持って、今年の夏は外に出てみてください。きっと、去年とは違う夏になります。
センス・オブ・ワンダーの話は、こちらにも書いています。
→ 虫取り網が教えてくれること。センス・オブ・ワンダーと、子どもと過ごす夏の話
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことをご注意ください。

採集した後はどうなさるのですか。標本ですか。
放してやってください。ただでさえ減りつつあります。彼らの生を尊重して、生態観察、撮影のみにしませんか。
むやみに手出しせず、そっとしておくことが、生態系のバランスをくずさないことになります。その1匹がいなくなると、それを食べていた者が飢えます。又、その虫に食べられていたものが数を増やします。そうやって生態系のバランスが崩れていき、人間にも影響してくるのですよ。勉強して下さい。
もし、あなたが虫で、誰かにつかまり、一切自由を奪われ、結婚もできず、となったら幸せですか。
この100年で、わたしたち人間は地球上の生物種の3割を絶滅させました。このままいけば次の100年で、さらに8割近くの生物種が絶滅するといわれています。
事実、世界人口が70億人を超え、この50年で魚介類の消費量は5倍に増加。このままでは海から魚がいなくなってしまう、そう心配する声も世界中であがっています。
農業で使用される農薬、あるいはもっと大規模な環境破壊や環境汚染について、山本さんはどう考えておられるのでしょうか。
生態系のバランスを崩しているのは、わたしたち大人です。
なのにこの事態に対処していかないといけないのは、いまの子どもたちです。その子どもたちに「虫は殺しちゃいけない。かわいそうだ」と教えることで、何かが変わるでしょうか。
子どもが昆虫採集でつかまえてくる虫の数なんてたかがしれています。わたしはむしろ、幼少期のそういう自然体験こそが大自然への愛着、畏怖と神秘の念を育て、命のはかなさや大切さを知ることにつながる、と思うのです(そのあたりは前の記事に書きました)。それがのちのち自然を守らなければならない、という意識につながってくるように思うから。
というのは、わたしの考え方というか、自然観です。山本さんのご意見がまちがっているというつもりはまったくありません。
貴重なコメント、ありがとうございました。
私も葉山さんに同意します。
私は幼少期はそれほど好きではありませんでした。
ただ、ダンゴムシやテントウムシ、トンボだけは好きでよく取っていました。
取っては観察して話すだけです。
カブトブシやカエルはダメでした。
今、子供が2人いますが、虫嫌いの妻の影響もあり、特に長女が虫に対して過剰な反応をします。
ダンゴムシの死骸が怖くて、壁にへばりついてるカナブンが怖くて玄関のドアが開けられないんです。
ところが、先日の香川照之さんのカマキリ先生の番組を見て、私が子供たちに昆虫採集経験をさせようとすると、最初は怖がってた子供達がとてもイキイキし出しました。
チョウチョやトンボを自分で捕まえて喜んでました。
何も知らないから怖いだけ、実際に触れて実感して昆虫世界から学べることは多いはずです。
ゲームや机上では知り得ない、真に心を震わせる体験が、実は身近な世界に沢山あります。足元をみれば沢山転がってるのです。
その感動体験をさせ、心を震わせ、人を育てるのが親の世代の義務だと思ってます。
そして子供のおかげでまたこのような経験をさせてもらえてるコトに心から感謝してます。
だから私はヒマワリさんを全面的に支持します。
コメント、どうもありがとうございます。
あの番組、いいですよね。
部活でよく昆虫採集をする者です。
文化祭などで、標本を展示したり、体験会をしますが、男の子はたくさん参加してくれます。
私は小さい頃はカブトムシやクワガタムシなど好きだったのですが、今はハバチやヨコバイなど、小さい昆虫の魅力をよく感じます。
思うのは、昆虫採集ってよく子どもっぽいといわれますが、たいていの人って目の前を飛んでる小さな虫の名前も知らないんですよね。昆虫に関して無知なのに。馬鹿にするなんて、昆虫にも、昆虫好きにも失礼です。
哺乳類にある程度人気があるように昆虫も同じ生物、いやもっと前から反映してきた超機能的な生物として、もっと興味を持ってもらえると嬉しい限りです。
昆虫採集部? 科学部? そういう部活があるんですねえ。楽しそう。