娘が4歳のとき、公園で盛大に転びました。
顔面から地面に突っ込むという、見ているだけで痛そうな転び方で、コンクリートに前歯をしたたか打ちつけました。泣き声を聞いて駆け寄ると、口の周りが血だらけ。しばらくして歯科医に診てもらったところ、「前歯の神経が死んでいます」と告げられました。
それ以来、その前歯は周りより少し黒ずんでいます。さわるとわずかにぐらつきます。レントゲンを撮ってもらうと、永久歯の生える向きが少し変だということもわかりました。「まあ、たぶん大丈夫でしょう」と先生はおっしゃっていましたが、親としてはやはり気になります。
歯は一生もの。子どものころのケアが、その一生を左右する——そのことをあらためて痛感しました。
はやま
乳歯は、お腹の中からはじまっている
意外に思われるかもしれませんが、赤ちゃんの乳歯は、妊娠1か月の頃からお腹の中で作られはじめています。生まれてくる前から、すでに歯の準備が始まっているのです。
その後、生後4〜8か月ごろに下の前歯がそろりと顔を出します。3歳になるまでに乳歯が20本勢ぞろいして、やっと「完成形」。ここから小学校入学前後まで、しばらく乳歯の時代がつづきます。
そして5〜7歳ごろ、いよいよ永久歯への生え替わりがスタート。14〜16歳ごろには永久歯28本が揃います(親知らずは別)。
乳歯と永久歯、生える時期の目安


| 時期 | 歯の状態 |
|---|---|
| 妊娠1か月〜 | 乳歯がお腹の中で作られはじめる |
| 生後4〜8か月 | 下の前歯が生えはじめる |
| 1歳ごろ | 前歯が上下4本ずつ生える |
| 3歳ごろ | 乳歯20本が揃う |
| 5〜7歳ごろ | 永久歯への生え替わりがスタート |
| 9〜11歳ごろ | 乳歯と永久歯が混在する「混合歯列期」の山場 |
| 14〜16歳ごろ | 永久歯28本が揃う |
生え替わりの時期には、かなり個人差があります。周りの子より遅くても、あまり心配しなくて大丈夫です。気になる場合は歯科でX線検査を受けてみてください。
「混合歯列期」こそ、いちばん油断できない
乳歯と永久歯が入り混じる5〜11歳ごろを「混合歯列期」と呼びます。この時期、歯並びが複雑になり、歯ブラシが届きにくい場所が増えます。つまり、虫歯になりやすい。
しかも、この時期は歯の土台となる骨格が成長する大切な時期でもあります。乳歯が虫歯になって神経が傷んだり、早めに抜けてしまったりすると、永久歯の形や生え方に影響することもあります。隣の歯が空いたスペースに移動して、永久歯の居場所がなくなってしまう——そういう「玉突き」のようなことが起こりうるのですね。
はやま
虫歯菌はどこからやってくる?
ここで少しだけ、虫歯の仕組みをおさえておきましょう。
虫歯の原因菌は「ミュータンス菌」といいます。実は、生まれたての赤ちゃんの口の中にはいません。どこから来るかというと、親や祖父母から。口移しで食べ物をあげたり、同じスプーンを使ったりすることで、菌が移ります。
15歳ごろには、子どもの約9割の口の中にミュータンス菌が棲みついているといわれています。感染そのものをゼロにするのは現実的ではありませんが、とくに乳幼児期の「口移し・食器の共有」は控えたほうが無難です。
虫歯のしくみ:脱灰と再石灰化

ミュータンス菌の好物は糖質です。砂糖だけでなく、ごはん・パン・めん類・果物・芋類——。私たちが日常的に食べているものの多くが対象です。糖質を口にすると菌が酸を作り出し、その酸が歯のカルシウムを溶かします。これを「脱灰(だっかい)」といいます。
ただ、私たちの体にはちゃんと防衛機能も備わっています。唾液が酸を中和し、溶けた部分を修復してくれる「再石灰化」という働きです。要は、脱灰と再石灰化のバランスが虫歯になるかどうかを左右しているわけです。
ポイント
脱灰は食後すぐに始まりますが、再石灰化は食後30分以上経ってからスタートし、完全に修復されるまでに2〜3時間かかります。だから「食後2〜3時間はできるだけ何も口にしない」ことが、虫歯予防の基本になります。
歯の色が黄色い・茶色い・黒い、それぞれの理由
子どもの歯の色が気になっている方のために、色ごとの原因をまとめておきます。
黄色い→ほぼ正常です
歯の色は、内側にある象牙質の色です。日本人(モンゴロイド)の象牙質は生まれつきクリームイエローがかっていますから、多少黄色っぽく見えるのは当たり前。真っ白な歯のほうが、むしろ不自然です。
茶色い→着色がほとんど
お茶の茶渋などによる着色が多いです。研磨剤入りの歯磨き粉や、歯科でのクリーニングで落とせます。
黒い→歯科治療の影響の可能性あり
「サホライド」という薬剤を使った虫歯治療の副作用で、歯が黒く変色することがあります。歯を削らずに虫歯の進行を止める薬なのですが、塗った部分がお歯黒のように真っ黒になってしまうのです。
低年齢の子(1〜2歳ごろ)は、椅子に座って大人しく治療を受けるのが難しいため、サホライドが使われることがあります。虫歯の進行を止める効果はありますが、見た目の代償が大きい。「痛みが治まる代わりに、歯が黒くなります」と言われたら、当然迷いますよね。
以前、公園でばったり会った知人の話を思い出します。彼の息子の健太郎くん(当時4歳)は、2歳のときにサホライドで前歯を治療して、それ以来ずっと前歯がお歯黒状態でした。最初のうちは本人も気にしていなかったそうですが、4歳になるころには、人前で口を開けることをひどく恐れるようになっていました。保育園で友だちに何か言われたり、好きな子に冷たくされたり——。子どもなりに傷ついていたのでしょう。
知人は「永久歯に生え替わるまでの辛抱だから」と笑っていましたが、小学3年生まで前歯がお歯黒というのは、4歳の子にはかなり長い時間です。
帰宅して調べてみると、実はサホライドで黒くなった歯も、歯科でレジン(プラスチック)を使った治療で白くすることができます。保険適用内で受けられます。すぐに相談することをすすめればよかった、と今でも少し後悔しています。
もうひとつ知っておいてほしいのは、サホライドを使わずに低年齢児の虫歯を治療できる歯科医も、ちゃんと存在するということです。もし「サホライドを使います」と言われて迷ったときは、セカンドオピニオンを求める選択肢もあります。
はやま
乳歯のうちから、ていねいに
「乳歯はどうせ抜け替わるんだから、虫歯になっても大丈夫」と思われることがあります。でも、乳歯の状態は永久歯の生え方や歯並びに直接影響します。乳歯はいわば、永久歯のための「地ならし役」。その仕事をまっとうできるよう、丁寧にケアしてあげることが大切です。
具体的な歯磨きの方法や、子どもの歯を強くする食事については、次の記事でご紹介しています。
→ 子どもの歯を守る5つの習慣——かかりつけ歯科医に教わったこと
※このブログの情報は、医療機関の監修を受けておらず、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。記事内でご紹介している効果効能についても栄養素や成分に関するものであり、商品やサービスに関するものではないことをご注意ください。


我が家の息子も二歳にして真っ黒でしたがこちらの記事を読み、息子に合う歯医者をみつけ真っ白に治療してもらいました。やはり息子も黒いのを気にしていたみたいだったので。親として虫歯にさせてしまったのはものすごく反省ですが、このような治療があるとわかり本当に助けられました。ありがとうございます!
めっそうもない。お役に立てたようでなによりです。ご丁寧にありがとうございました。