今日のおやつが、子どもの脳と腸をつくっている

木製のテーブルの上に、カラフルな旬の果物(いちご、みかん、ぶどうなど)と、素朴なおやつ(おにぎり、チーズ)が並んでいる

「うちの子、なんか集中力がない」「いつもイライラしてる」

それ、甘いもののせいかもしれません。

「うちの子、お菓子とジュースばかりで……」

そう思いながらも、泣いたり駄々をこねたりされると、つい渡してしまう。買い物に行けばレジ前でせがまれ、おやつの時間になればコンビニのお菓子に手が伸びる。毎日毎日、その繰り返し。

責めているわけじゃありません。むしろ、そんな罪悪感を持ちながらも子どもと向き合っているあなたは、十分すぎるくらい頑張っている。

ただ、少しだけ立ち止まって聞いてください。甘いものを与え続けることで、子どもの体の中で何が起きているのか。知っておくだけで、今日から何かが変わるかもしれません。

はやま

わが家の娘が保育園のころから、食卓でよくこんな話をしていました。「いま食べているものが、そのまま君の体をつくるんだよ」。幼い娘にはよくわからなかったと思います(笑)。でも、何年もかけてそういう話を積み重ねてきたことが、今の娘の食への向き合い方につながっていると感じています。

甘いものを食べると、子どもの体で何が起きているの?

まず、基本的な仕組みを知っておきましょう。

お菓子やジュースを口にすると、血糖値(血液中の糖の量)が急激に上がります。すると体は「糖が多すぎる!」と判断し、インスリンというホルモンを大量に分泌して血糖値を下げようとします。

問題はここからです。インスリンが一気に出ると、今度は血糖値が急降下する。この急激な乱高下を「血糖値スパイク」と呼びます。山あり谷ありのジェットコースターが、子どもの体の中で繰り広げられているわけです。

コーラ500mlには角砂糖約16個分の糖が含まれています。「健康的なイメージ」のスポーツドリンクも、糖分はたっぷりです。果汁100%ジュースも例外ではありません。子どもが「おいしい」と飲み干すたびに、このジェットコースターが動き出しています。

「集中できない」「イライラする」の正体

血糖値スパイクが脳に与える影響は、想像以上に大きいことがわかっています。

脳のエネルギー源はブドウ糖です。血糖値が急降下してブドウ糖が不足すると、集中力・記憶力・判断力・実行機能——脳が司っているほぼすべての力が低下する可能性があります。食後40分で脳機能の低下が確認される実験結果もあります。

さらに、血糖値が急激に下がると体は「緊急事態だ」とアドレナリンを分泌します。アドレナリンは別名「攻撃ホルモン」とも呼ばれ、これが子どものイライラ、情緒の不安定、ちょっとしたことでキレるといった行動と関連しているといわれています。

「最近うちの子、授業中に集中できないと先生に言われた」「何かというとすぐ機嫌が悪くなる」——そういった悩みと、日頃のおやつやジュース習慣が無関係ではないかもしれません。

はやま

娘は小学校も中学校も、塾なし・家でほとんど勉強せず、それでも成績はトップクラスでした。食事との因果関係は正直わかりません(笑)。でも血糖値スパイクが脳のパフォーマンスを下げることは科学的に裏付けのある話です。「関係なかった」とも言い切れないんですよね、やっぱり。

血糖値スパイクは「繰り返す」ことで問題が深まる

一度のお菓子でどうなるというわけではありません。問題は毎日繰り返すことです。

血糖値スパイクを日常的に繰り返すと、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じてきます。インスリンは脳内でも記憶や学習をサポートする役割を担っており、その働きが低下すると記憶力や学習能力にも影響が及ぶ可能性があります。

子どものころからの食習慣は、大人になってからの体の土台をつくります。「今だけ」の話ではないのです。

腸にも影響が出ている

砂糖の過剰摂取がもたらす影響は、脳だけではありません。腸の中にも変化が起きています。

糖分を摂りすぎると、腸内の悪玉菌が増えて腸内環境が乱れます。腸は「体の免疫細胞の約7割が集まる場所」ともいわれており、腸内環境の悪化は免疫力の低下に直結します。つまり、甘いものの摂りすぎが、風邪をひきやすい体をつくっている可能性があるのです。

また、腸内環境の乱れは肌荒れ、便秘、アレルギー症状の悪化とも関連があることが近年の研究でわかってきています。「花粉症がひどくなった」「アトピーが出やすい」——そういった症状の背景に、日常の食習慣が関係していることがあります。

はやま

うちの娘は小さいころから、食事が乱れると肌が荒れやすい体質でした。逆に食べるものを整えると肌の調子もよくなる。風邪もひきにくくなる。「食と体はつながっている」ということを、娘自身が体感として知っている。それは何より強い「知識」だと思っています。腸内環境と免疫の関係についてはこちらの記事

思春期の砂糖過剰摂取は、脳の発達にも影響する可能性がある

少し気になる研究結果もあります。国立精神・神経医療研究センターが2021年に発表した研究によると、思春期における砂糖(グルコースとフルクトース)の過剰摂取が、遺伝的リスクと重なると、成長後の脳機能に影響を及ぼす可能性があることがマウスの実験で示されました。

マウスの実験ですから、そのまま人間に当てはめることはできません。ただ、成長期の脳と食事の関係が私たちの想像以上に深いかもしれないということ。このことは、頭の片隅に置いておく価値があると思います。

じゃあ、どうすればいいの?

「子どもから甘いものを取り上げましょう」とは言いません。それは現実的ではないし、そもそも楽しみを奪うことが目的ではない。大切なのは「禁止」ではなく「置き換え」の発想です。

わが家で自然とやっていたことをいくつかご紹介します。難しいことは何もありません。

①ジュースは「飲みもの」ではなく「お菓子」と考える

コーラはもちろん、果汁100%ジュースも糖分は相当量含まれています。「ジュースは特別なとき」というルールを作るだけで、日常的な糖分摂取をかなり減らせます。普段の飲みものは水かお茶に。喉が渇いたときに自然と手が伸びるよう、冷蔵庫に麦茶を常備しておくのがシンプルで続けやすい方法です。

②おやつは「補食」と考える

育ち盛りの子どもにとって、おやつは食事と食事の間のエネルギー補給です。お菓子でなくてもいい。おにぎり、ゆで卵、チーズ、干し芋、果物——。そういった「素朴で昔ながらのもの」で十分です。「おやつ=お菓子」という思い込みをちょっとずらすだけで、選択肢がぐっと広がります。

③夕食後の甘いものは果物で

食後に甘いものが欲しくなるのは自然なことです。そこをケーキやアイスではなく、旬の果物で代えてみてください。果物にも糖は含まれていますが、食物繊維とともに摂れるので血糖値の上がり方が穏やかです。季節の味を楽しむ習慣は、食への豊かな感受性を育てることにもつながります。

④買い物のとき、ラベルを確認する習慣を

「子ども向け」「ビタミン入り」と書いてあっても、裏のラベルを見ると糖分がたっぷりということは珍しくありません。栄養成分表示の「炭水化物」または「糖質」の数字を確認する習慣をつけると、食品選びの目がぐっと変わります。慣れると30秒もかかりません。

⑤「いいもの」を増やすことを先に考える

甘いものを「減らす」ことばかり考えると、どこかで反動が来ます。それよりも、野菜、発酵食品、良質なたんぱく質といった「腸が喜ぶもの」を日々の食事に増やしていくと、自然と甘いものへの執着が薄れていきます。足し算の発想で、引き算は後からついてくる。

子どもは言葉より、背中を見ている

最後に、少し違う話をさせてください。

「食育」というと、正しい知識を正しく教えることだと思われがちです。でも、子どもは言葉よりも親の背中を見ています。親がジュースを飲みながら「ジュースは体に悪い」と言っても、どこか軽く聞こえる。逆に、親が自分の言葉で、自分が腹に落としたことを食卓で話してくれると、それはちゃんと届きます。すぐにではなくても。

「これを教えなきゃ」と構える必要はありません。自分が気づいたこと、感じたことを、そのままごはんの時間に話してみてください。「今日これを食べたら、なんか体が軽い気がする」でもいい。そういう積み重ねが、子どもの食への感受性を育てます。

はやま

わが家でずっとやってきたことは、ただそれだけです。難しいことは何もない。今日食べているものが、そのまま子どもの体をつくっている。その実感を、食卓から少しずつ分け合っていけたら、それで十分だと思っています。

完璧にやろうとしなくていいです。今日のおやつをひとつ変えてみる。冷蔵庫に麦茶を入れてみる。それだけで十分なスタートです。


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