脳みそには、使い方がある。マインドマップで子どもの思考力を育てる話

マインドマップを描く子ども

脳みそというものは、ただやみくもに使っていても、なかなか思い通りに働いてくれません。

ところが使い方を変えると、驚くほど効率が上がる。記憶の定着率も上がる。そして、なにより考えることが、楽しくなる。

そんな「脳の使い方」を教えてくれるツールが、マインドマップです。

これ、子どもにこそ早いうちに教えてあげたい、とわたしはずっと思っています。

司書が「そんな本はありません」と言った日

マインドマップの生みの親は、トニー・ブザンというイギリス人です。1942年、ロンドン生まれ。

以前、仕事でブザンさんに取材をさせていただいたことがあります。映画のセットのように豪奢な応接室で、ソファはふかふか、テーブルは膝よりも低くて、メモをとるのにたいへん苦労したのを覚えています。

ブザンさんが学生のころ、大学の勉強があまりにハードで、もっとうまく頭を使う方法はないものかと図書館へ行ったそうです。でも司書は彼を医学書の棚へ連れていき、こう言った。「そんな本はありません」と。

はやま

つまり、脳みそを効率よく使う方法を探したら、「そんな学問は存在しない」と言われたってこと?

そう、まさにそういうことです。

「そんなバカな」と思ったブザンさんは、そこから10年近く、脳科学、心理学、神経言語学、記憶術、創造的思考法などをひたすら独学し、自分でその方法を開発してしまった。それがマインドマップです。

物腰のやわらかい英国紳士でした。でも、話していると、眼球の奥でときおり、鋭利な光がひらめく。天才というより、「考えることを諦めなかった人」という印象でした。

マインドマップとは何か

一言でいえば、「頭のなかを絵にする」技術です。

紙の中央にテーマを書き、そこから枝を伸ばして、関連するキーワードをどんどんつなげていく。色や太さ、イラストも使って、視覚的に表現します。

なぜこれが効くのか。人間の脳は、文字の羅列より、色や絵、かたちで記憶するのが得意だからです。マインドマップは、脳がもともと好む「考え方」に合わせた方法なのです。

ブザンさんは開発後まず、学習障害や失読症の子どもたちにこの方法を試しました。成績がたちまち上がり、クラスで一番になった子も、落ちこぼれから大学を首席で卒業した子も出たといいます。

その後、マインドマップはウォルト・ディズニーやGM、IBMなど世界中の企業にも広まり、いまでは数億人が使う思考ツールになりました。

子どもへの教え方——「好きなもの」からはじめよう

難しく考えなくて大丈夫です。最初のテーマは「自分の好きなもの」がぴったりです。

用意するもの

白い紙(A4以上が◎)、色鉛筆やカラーペン

  1. 紙の中央に、ピンク色のハートを描く(これがテーマ)
  2. そこからを何本か伸ばす
  3. 枝の上に「運動」「色」「友だち」「学校」など、好きなカテゴリを書く
  4. さらにその先に枝を伸ばして、具体的なものを書いていく(運動なら野球、サッカーなど)
  5. 線の色や太さを変えて、小さなイラストも添える
子どものマインドマップの例(好きなもの)
「ぼくの好きなもの」をテーマにした子どものマインドマップ

ポイントは、手を止めないこと。正しいかどうか考えず、思いついたものをどんどん書いていく。頭のなかにあるものを全部外に出す、という感覚で。

はやま

娘とやってみたとき、枝がどんどん伸びて止まらなくなりました。気がついたら30分たっていて、本人は「まだ書きたい!」と言ってました。

手を動かすと、頭のなかが整理される——そういう不思議な効果があります。慣れてきたら、夏休みの自由研究や読書感想文の下準備にも使えますよ。

テーマを深掘りするのにも使える

慣れてくると、もっと複雑なテーマでも試したくなります。

これは、わたしが哲学をテーマに描いてみたマインドマップ。

哲学のマインドマップ
古代ギリシアの哲学者たちをテーマにしたマインドマップ

文章で説明するより、ずっと全体像がつかみやすいと思いませんか。

わたし自身、ある分野の知識を体系化したいと思ったとき、関連する本を何冊も読みながらマインドマップを描いていく、という方法をよく使います。読んだだけでは散らばっていた情報が、枝でつながることで「あ、そういうことか」と腑に落ちる瞬間がくる。記憶の定着率も、まったく違います。

編集者時代は、原稿を書く前に使っていました。資料も取材ノートも山積みで、情報が未消化のまま書けない——そういうとき、布団に入る前にマインドマップを描いておきます。すると翌朝、頭のなかに原稿の流れができあがっている。毎回とはいきませんが、これは本当に何度も経験しました。

デジタルで描くなら「XMind」が手軽

最初は手書きで感触をつかむのがいちばんです。でも慣れてきたら、アプリを使うと整理しやすくなります。

わたしが使っているのはXMind(無料で使えます)。きれいなマインドマップがサクッと描けて、修正も楽です。スマホ版もあるので、思いついたときにすぐ使えます。

おわりに——凡人が才人に近づく方法

ブザンさんは、たぶん天才ではありません。天才なら、苦労してこんな思考技術を開発する必要はなかったはずです。

「脳みそをうまく使う方法を教えてくれる本はないか」と図書館へ行き、「そんな本はない」と言われたとき、あきらめずに自分で10年かけて作ってしまった。そこに、この方法の本質があると思います。

考えることを習慣にする。整理することを楽しむ。子どものうちからそれが身につけば、どんな分野でも、きっと強い武器になります。

はやま

色鉛筆を用意して、白紙を目の前にしたときのワクワク感は、何年たっても変わりません。子どもとふたりで、まず「好きなもの」からはじめてみてください。

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