なんとなく気分が重い日に読むーー幸せホルモン(セロトニン)を増やす食べ方・動き方・整え方

なんとなく気分が重い日に読むーー幸せホルモン(セロトニン)を増やす食べ方・動き方・整え方

「最近なんとなく気分が上がらない」「朝起きるのがしんどい」「イライラしやすくなった気がする」——そんな日が続いていませんか?

原因はいろいろ考えられますが、そのひとつに「セロトニン不足」があります。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質で、気分や睡眠、腸の調子など、わたしたちの毎日に深く関わっています。

この物質が減ると、気持ちが滅入ったり、眠れなくなったり、お腹の調子が悪くなったりと、なんともつらい症状が重なりがち。逆に言えば、セロトニンを意識的に増やすことで、毎日の気分はずいぶん変わってくるのです。

この記事では、食べ方・動き方・整え方の3つの切り口から、セロトニンを自然に増やす方法を紹介します。薬や特別な治療は必要ありません。今日からできることばかりです。

そもそもセロトニンって何者?

セロトニン(正式名称:5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)は、気分・睡眠・食欲・記憶・自律神経など、驚くほど多くの機能に関わっています。これが乱れると、気力の低下、不眠、腸のトラブルなど、心身のあちこちに影響が出ます。

不安やうつ、偏頭痛、過敏性腸症候群(IBS)を抱える人は、セロトニンレベルが低いことが多いとされています。

おもしろいのは、セロトニンの約90〜95%がでつくられているという事実。「幸せは腸から」というのは比喩じゃないわけです。腸の細胞がアミノ酸「L-トリプトファン」を材料にセロトニンをつくり、蓄え、放出する。これが腸の動きや痛みのコントロールまで担っている。

さらにセロトニンは、腸内細菌と脳のコミュニケーションの仲介役でもあります。腸内細菌のバランスが崩れると、セロトニン関連の不調が起きやすくなる。「なんとなくネガティブ」「ストレスに弱い」という人は、腸の状態を見直す価値があるかもしれません。

はやま

セロトニンは脳だけじゃなく腸でつくられる。だから腸が元気じゃないと、気分も上がりにくい。「幸せは腸から」——これ、ほんとの話だったんです。

また、脳内でセロトニンを産生するには、腸でつくられた「5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)」が脳の関門を越えて届く必要があります。このプロセスを助けるのが、ビタミンDやオメガ3脂肪酸、そしてあとで紹介するいくつかの栄養素です。

なお、セロトニンが不足すると睡眠ホルモン「メラトニン」の産生も落ちます。夜眠れない、朝スッキリ起きられない——その悩みも、実はセロトニン不足が関係しているかもしれません。

食べ方でセロトニンを増やす

トリプトファンを含む食品をとる

食品100gあたりのトリプトファン含有量

セロトニンの材料となる「L-トリプトファン」は、体内ではつくれません。食事から摂取するしかない必須アミノ酸です。

トリプトファンが豊富な食品:魚、豆類、種子類、ナッツ、乳製品、豆乳

食品100gあたりのトリプトファン含有量(mg)の目安はこちらです。

  • すじこ:331mg
  • ひまわりの種:310mg
  • たらこ:291mg
  • チーズ:291mg
  • 肉類:150〜250mg
  • 納豆:242mg
  • アーモンド:201mg
  • そば:192mg
  • 白米:89mg
  • ヨーグルト:47mg
  • 牛乳:42mg

ただし正直に言っておくと、これらを食べても脳のセロトニンがすぐ増えるかどうかは、現時点の研究では必ずしも明確ではありません。ただ、トリプトファンが不足すれば、セロトニン産生が落ちることは確か。「極端に少なくならないようにする」という意識でとり入れるのがいいでしょう。

ひとつ注意点として、筋トレ好きの方へ。BCAAサプリメントを多量に摂取すると、脳内のトリプトファンやセロトニン・ドーパミンレベルが下がることがわかっています。気分の落ち込みを感じている方は、BCAAの量を見直してみるのもひとつの手です。

腸内環境を整える発酵食品をとる

乳酸菌などのプロバイオティクスは、腸内細菌叢を改善し、腸と脳のコミュニケーションをスムーズにします。さらに腸内細菌は、わたしたちの体内ではつくれないトリプトファンを産生する能力を持っています。

ある研究では、8週間のプロバイオティクス摂取が110人のうつ病患者の体内トリプトファンを増加させました。ラットへの14日間投与でも血中トリプトファンの増加が確認されています。

サプリメントも悪くないですが、味噌・ぬか漬け・納豆・キムチ・ヨーグルトといった発酵食品を毎日の食卓に取り入れるのが、やはり王道だと思います。

はやま

我が家の食卓には必ず発酵食品があります。味噌汁、ぬか漬け、納豆……。「腸が喜ぶもの」を意識して選んでいると、自然とセロトニンの材料も整ってくる気がします。

サプリメントでセロトニンを補う

L-トリプトファン・5-HTP

トリプトファンは「L-トリプトファン」のサプリとして入手できます。また、トリプトファンからつくられる「5-HTP」のサプリもあります。5-HTPは脳の関門を通過して、脳内でセロトニンに変換されます。

研究では、トリプトファン摂取によって血中セロトニンが上昇し、気分・睡眠・認知機能・腸の問題が改善する可能性が示されています。乳由来のたんぱく質「α-ラクトアルブミン」(12g)は、90分後に血中トリプトファンを16〜43%増やすとも報告されています。

オメガ3脂肪酸(魚油)

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、脳の神経細胞がセロトニンを放出・活性化するのを助けます。不足するとうつ病などの精神疾患リスクが高まるとも言われています。

興味深いのは、日本の大規模疫学研究で「毎日魚を食べる人は自殺願望が低い」という結果が出ていること。和食の知恵はほんとうに理にかなっています。青魚(サバ、イワシ、サンマなど)を積極的に食べましょう。

ビタミンD

ビタミンDは、脳内でセロトニンをつくるための酵素を活性化します。不足すると脳でのセロトニン産生が滞ります。

9000人以上を対象にした研究では、生後1年間のビタミンDサプリ摂取が統合失調症リスクを77%減らすという結果も。現代人の多くはビタミンD不足と言われています。日光を浴びる習慣と、必要に応じてサプリの活用を。

マグネシウム

マグネシウムは脳内のセロトニン濃度を高める効果があります。軽〜中程度のうつ病患者60人に1日500mgのマグネシウムを8週間投与した試験では、症状の明らかな改善が確認されています。

葉物野菜・ナッツ・豆類に多く含まれます。和食を中心にした食生活なら、自然と補えます。

ビタミンC・亜鉛

ビタミンCはラットの実験で脳内セロトニン濃度を6週間にわたり上昇させました。亜鉛は脳内のセロトニン受容体の感受性を高めることが確認されています。両者とも食事から積極的に摂りたい栄養素です。牡蠣・赤身肉・全粒粉に亜鉛が多く含まれます。

アシュワガンダ、サフラン、そしてカバカバの話

ここで少し変わり種を2つ紹介します。

アシュワガンダはインドのアーユルヴェーダで何千年も使われてきたハーブ。ストレスホルモン「コルチゾール」を抑え、不安を和らげる効果が複数の臨床試験で確認されています。セロトニンを直接増やすというより、ストレスの悪循環を断ち切ることで、結果的にセロトニンが働きやすい状態をつくる、というイメージです。日本でもサプリとして手軽に入手できます。

サフランは、スペイン料理のパエリアに使われるあのスパイスです。うつ症状の改善に関する臨床試験が複数あり、抗酸化作用もあります。少量をスープや炊き込みごはんに加えるだけでいい。「食で整える」という文脈にとても合っています。

あと、カバカバという南太平洋のハーブもセロトニン様の成分を含み、不安軽減に効果があるとされています。わたし自身も試したことがありますが、心のこわばりがふっとゆるむような、なんとなく緊張がほぐれる感じがありました。気のせいかもしれませんが(笑)。ただ日本では入手が難しいので、上に挙げたアシュワガンダのほうが現実的かと思います。ちなみにお酒のほうがずっとほっとする、というのが正直なところですが……それはまた別の話で(笑)。

動き方でセロトニンを増やす

有酸素運動

運動は最もシンプルで強力なセロトニン増加法のひとつです。身体を動かして疲れると、脳の関門を通過する5-HTP(セロトニンの前駆物質)が増加します。定期的な有酸素運動は、そのメリットをさらに大きくしてくれます。

わざわざジムに通う必要はありません。30分の早歩き、自転車、水泳。ちょっと息が上がるくらいの運動を習慣にするだけで十分。

ヨガ・瞑想

ヨガと瞑想は、軽〜中程度のうつ症状を改善できることがわかっています。薬が効かないケースでも効果が確認されているほどです。

瞑想は、感情コントロールや問題解決能力、適応力に関わる脳の部位を活性化させます。毎朝5分、静かに座って呼吸を整えるだけでも、少しずつ変化が出てきます。

はやま

わたし自身、ヨガと瞑想は10年以上続けています。「セロトニンを増やすため」という意識よりも、「頭の中の騒音を静める時間」として大切にしています。結果として気分が安定してきた、という感じかな。

整え方でセロトニンを増やす

音楽を聴く

音楽が神経伝達物質を増やすこともわかっています。ラットにモーツァルトを聴かせたところ、脳内のセロトニン放出が増加したという研究もあります。好きな音楽をかけながら料理する、散歩する——それだけで十分な「整え方」になります。

マッサージ

マッサージはストレスホルモン「コルチゾール」を減らし、セロトニンとドーパミンを増やします。週2回・30分のマッサージでセロトニンレベルが上がったという研究があります。

プロのマッサージじゃなくても構いません。パートナーや家族に肩をもんでもらう、自分で足裏をほぐす。そういった日常の小さなケアが積み重なります。

鍼の施術を受けた75人の女性において、血液中のセロトニンが増加しました。ラット実験でも、鍼治療によって脳のセロトニン活性が高まることが確認されています。

鍼が気になっている方は、ぜひ一度試してみてください。わたしも興味はあるのですが、まだ試したことがありません。定期的に通う人の話を聞くと、体だけでなく気分にもよい影響があるそうです。

カウンセリング・心理療法

精神療法やカウンセリングは、脳内に化学変化をもたらし、セロトニン受容体を増やすことでセロトニンの働きを高めます。自律神経失調の患者23人が4か月間の心理療法でセロトニン活性が高まり、うつ症状が改善したという報告もあります。

「カウンセリングは敷居が高い」と感じる方も多いですが、気分の不調が続くようなら、専門家に話を聞いてもらうのは確実に有効な手段のひとつです。

最後に——「やりすぎない」が一番大事

ひとつ安心材料として。セロトニン過剰による「セロトニン症候群」という危険な状態がありますが、これを引き起こすのはLSDやMDMAなどの合成ドラッグです。食事やサプリ、生活習慣の範囲では心配ありません。

また、ここで紹介した研究のなかには、動物実験のみで確認されているものも少なくありません。「これさえ飲めば絶対に治る」というものではなく、「積み重ねていくと、じわじわとよくなっていく」というイメージで取り組むのが現実的です。

食事を整える、腸を大切にする、身体を動かす、音楽を楽しむ、人に触れてもらう——これらはどれも、特別なことではありません。昔の人が当たり前にやっていたことばかりです。

はやま

セロトニンを増やすために特別なことをしなくてもいい。毎日の食事を丁寧にとる、ちゃんと動く、ゆったりする時間をつくる。それだけで、きっと気分は変わってきます。難しく考えすぎないこと、これも大事なことだと思っています。

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