太りやすい体質は「選ばれた体質」だった——ダーウィンの名言にまつわる、ちょっとうれしい誤解の話

Darwin's Quotes

同じものを食べているのに、友達は全然太らない。自分だけむくむくと……。心当たりのある方、いませんか。

実はこれ、ダーウィンの進化論で説明できます。しかも、ちょいとうれしい方向で。

太りやすい体質は「選ばれた」体質だった

人間の体質には個人差があります。同じ量を食べても、吸収率がまったく違う。太りやすい体質の人は、少ない食事から効率よくエネルギーを蓄えられる体を持っている。

これ、飢饉がやってきたら最強です。

食べ物が乏しかった時代(人類の歴史のほとんどはそう)、この体質の人は生き延びた。生き延びて、子孫を残した。「太りやすい体質」は、厳しい環境をくぐり抜けてきた、選ばれた形質でもあるわけです。

ダーウィンが言ったのは「強いものが生き残る」ではなく、「その環境に合っていたものが生き残る」ということでした。今の飽食の時代には不利に見える体質も、別の環境では圧倒的な強みになる。

はやま

アフリカのある地域では、ふくよかであることが美しさの証とされているそうです。美の基準は時代や場所によってまったく違う。「痩せていることが美しい」というのも、ある時代のある場所での話に過ぎないのです。

「ダーウィンの名言」は実はダーウィンの言葉ではなかった

「最も強い者が生き残るのではない。最も変化に適応した者が生き残るのだ」

ダーウィンの言葉として、ビジネス書やセミナーで何度も引用されてきたフレーズです。

実はこれ、ダーウィンは言っていません。

アメリカの経営学者が論文で「ダーウィンの言葉として」引用したものが広まった、というのが有力な説。「適者生存」という言葉自体も、ダーウィンの造語ではなく哲学者ハーバート・スペンサーが作ったもの。

世界中で信じられてきた「ダーウィンの名言」が、別の誰かが作ったものだった。

「正しいとされていること」を鵜呑みにしてはいけない、という話の格好の実例です。

ダーウィンが本当に言ったこと

ダーウィンが『種の起源』で言ったのは、こういうことです。

突然変異で生まれた個体が、たまたまその環境に合っていたから生き残った。進化とは、目的を持って「変化しようとした」結果ではなく、偶然の積み重ねの「結果」に過ぎない。

強いから生き残ったのでも、努力して変化したから生き残ったのでもない。たまたま、その環境に合っていたから生き残った。

太りやすい体質も、敏感すぎる気質も、要領が悪いと感じる部分も、今の環境に合っていないだけで、別の環境では有利な、あるいは誰かの役に立つ形質かもしれない。

「弱い自分はダメだ」という呪いを解く

誰かが歪めたダーウィンの言葉が「変化できない者は淘汰される」という強迫観念を生み、「強くなければダメだ」「痩せていなければダメだ」「もっとうまくやらなければ」という呪いになった。研究者の千葉聡氏はこれを「ダーウィンの呪い」と呼んでいます。

でも本当のダーウィンは、そんなことは言っていない。

恐竜が絶滅したのは「弱かったから」ではない。環境が変わり、たまたまその変化に合わなかったからです。逆に小さくて非力だった哺乳類が生き残ったのも、努力したからではなく、たまたま持って生まれた形質が新しい環境に合っていたからです。

はやま

「みんなが言っているから」「昔からそういうものだから」「有名な人の言葉だから」——そういう理由だけで信じていることが、世の中にはまだたくさんある。食や健康の分野でも、昨日の正解が今日は間違いになることが少なからずある。ダーウィン自身、当時の「生物は神が創った」という常識を疑い続けた人でした。その精神だけは、本物だと思います。

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