正しいことを言っているのに、相手は聞く耳を持たない。論理的に説明しているのに、なぜか話がかみ合わない。気がつけば相手が怒り出して、「もういい」と話を打ち切られる。どうして伝わらないのかと歯がゆい思いをする。
そういう経験、ありませんか。
もしかしたら問題は、あなたの「正しさ」ではないかもしれません。
人はそもそも、正しさを求めていない
人はたいてい、正しい答えより「わかってほしい」を求めています。
子育ての悩みを話したとき、「それはこうすればいい」と解決策を出されても、なんだかモヤモヤが残ることがある。でも「それは大変だったね」と言ってもらえると、すっと楽になる。
相手が求めているのは答えではなく、共感だったということです。
これは職場でも、夫婦間でも、友人との関係でも同じ。どれだけ正論を言っても、相手の「わかってほしい」が満たされていなければ、言葉は届かない。むしろ「正論で攻撃された」と感じさせてしまうことさえあります。
正しかったがゆえに処刑された
古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、真実を追い求めることに人生を捧げました。
権力者や知識人の「無知」を次々と暴き、「あなたが正しいと思っていることは本当に正しいか」と問い続けた。彼の言っていることは正しかった。若者たちは熱狂して彼についていきました。
でも権力者たちは怒った。自分たちの「正しさ」を脅かされたからです。
結果、ソクラテスは「若者を堕落させた」という罪状で死刑になりました。
正しかった。でも、伝わらなかった相手がいた。そして命を落とした。
これはソクラテスが悪かったのではありません。でも「正しければ伝わる」わけではない、ということをこの話は教えてくれます。
ソクラテスが本当に得意だったこと
実はソクラテスには、もうひとつの顔がありました。
彼は答えを押しつけませんでした。代わりに、問いかけました。
「あなたはどう思う?」「それはなぜだと思う?」——相手が自分で考え、自分で気づくように、静かに問いを投げ続けた。これを「産婆術」といいます。産婆が赤ちゃんの誕生を助けるように、相手の中にある答えを引き出す技術です。
自分の正しさを証明しようとするのではなく、相手の考えに興味を持つ。まず聞く。
それだけで、話の流れはがらりと変わります。
「伝える」より「聞く」が先
人に話を聞いてもらいたければ、まず相手の話を聞くこと。
簡単そうで難しい。とくに「自分が正しい」という確信が強いほど、聞くより先に話したくなる。説明したくなる。証明したくなる。
でもそのとき相手は、話の内容より「この人はわたしのことをわかろうとしているか」を感じとっています。
「あなたはどう思う?」。その一言が、相手の心を開く鍵になることがあります。答えを出す前に、まずそこから始めてみる。
はやま
伝わらなくていい話もある
どれだけ関係性を育てても、どれだけ上手に伝えても、伝わらないことはあります。
そういうときは「伝わらなくていい」と割り切ることもひとつの答えです。
すべての人にわかってもらう必要はない。波長の合う人にしっかりと届けばいい。
ソクラテスの言葉も権力者には届かなかったけれど、若者たちの心には深く刻まれました。彼の言葉は2000年以上経った今も、こうして読まれている。
伝わる人に、伝わればいい。それで十分だと思います。
はやま
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